VOL.121【速さの本質に迫る】 -シャドウ-
最近はトランプを知らない子供がいるようで、少しびっくりしました。
アメリカの大統領ではなくカードの方です。
私が子供の頃は、4、5人ほど人が集まればトランプをすることが多かったように思います。
高校時代クラスで大貧民が流行り、学校帰りにファーストフード店に居座った記憶があります(お店の方、あの時はすみませんでした。)。
大学に入っても何故かセブンブリッジが流行り、学食で仲間と楽しんだのは良い思い出です。
私は大貧民もセブンブリッジも小学生の頃からやっていたので、そこそこ強かったと記憶しています。
私の感覚ではトランプはカードゲームの王様のようなもので、知らない人はいないと思っていたのですが・・・
これも時代の変化なのだなあ、と一応納得したのですが、受験算数ではトランプは知っているのが当たり前なので、知らないと少し損かもしれません。
実は何年か前に授業でトランプを使ったことがあります。
その生徒さんは足し算を指を使ってやっていました。
受験でそれはまずい、というかさすがにそれでは実生活にも支障をきたすでしょう。
合否以前に、指を使わずに足し算をできるようにすることを目標にしたのですが、一筋縄ではいきませんでした。
試行錯誤の末辿り着いたのがトランプを使う方法です。
やり方は、まず同じマークの13枚だけを使い、そこから1枚抜いて、そのカードを当てるというゲームです。
もちろん、ヤマカンで当てるわけではなく残りの12枚を1枚ずつ見ていくのです。
最初に説明したのは
「1〜13までの和は91です。12枚のカードの数字を順番に足していき、その和を91から引いたものが答です。たとえば和が85なら抜いたカードは6ですね。」
ゲーム感覚で取り組んだのが良かったのか、すぐに当てることができるようなりました。
カードを持っているので指を使うことはできません。
その後、マークの種類を2〜4と増やしていきました。
さすがに3、4種類だときついので13で割った余りで良いことを教えました。
どうやるかと言うと、和が13以上になったら13を引くのです。
例えば、和が15になったらそれを2とみなすということですね。
実はこのアイデアは小学生の時に読んだトランプ手品の本にありました。
この手品は52枚の山から1枚抜いてもらい、残りのカードを2回ほど眺めて、当てるというものでした。
そのタネ明かしが、1回目はひたすら足し算してたまに13を引き数字を確定、2回目はマークを確認というギャグのようなものでしたが、意外な形で役に立ちました。
さて、今回のテーマは「シャドウ」です。
「影武者」と呼ぶこともあるみたいですが、ここでは「シャドウ」とします。
受験算数では、「少し高級だが知っているととても役に立つ」事柄がいくつかあります。
「シャドウ」もその一つで、難関校を目指すならばマスターは必須です。
このブログをご覧の方は「シャドウ」を知っているとは思うのですが、念の為「シャドウ」とはどういうものかの説明をします。
<例題1>
時計の文字盤の6と中心を結んだ線について、長針となす角と短針となす角が等しくなるのは3時何分ですか。
(答) 3時41 7 13 分
<解説1>
様々な解法があります。よくあるのが逆回りの長針をイメージするものです。
それを「シャドウ」としてもよいのですが、この問題ではもっとそれらしいのがあります。
短針と長針のちょうど真ん中にある針をイメージしてそれを「シャドウ針」とします。
「シャドウ針」の速さは長針と短針の速さの平均なので
(6+0.5)÷2=3.25(度/分)
となります。
また最初の位置は12の文字盤と3の文字盤の真ん中なので6の文字盤とは135°離れています。
「シャドウ針」が6の文字盤に達した時が答なので
135÷3.25=41 7 13 (分) …(答)
問題文には直接出てこないものを「シャドウ」として設定して、旅人算等で解くものと思ってもらえれば結構です。
次は「シャドウ」のありがたみが感じられる問題を紹介します。
<例題2>
時計が12時を指しています。
長針と短針が時計の文字盤の12と6を結ぶ直線に対して、12時以降最初に左右対称になる時刻を1番目の時刻とします。
では、1番目の時刻から何時間で14番目の時刻(12時以降14番目に左右対称になる時刻)になりますか。
ただし、長針と短針と対称軸が重なる場合も左右対称であるものとします。
(答) 12時間
<解説2>
「シャドウ針」が最初に対称軸と重なってからその後13回重なるまでの時間をきいています。
180度進むごとに重なるので、
180×13÷3.25÷60=12(時間) …(答)
この問題は「シャドウ」で解けば面倒な計算もほとんどなく暗算で答を出せそうです。
「シャドウ」の威力を感じていただけたでしょうか。
今回は時計算を題材に「シャドウ」を紹介しました。
VOL.99の今週の1題が良い練習になると思います。
もちろん通常の「速さ」の問題でも使えますし、「図形上の点の移動」では頻出になります。
「図形上の点の移動」でシャドウが使える問題はVOL.12の今週の1題です。参考にしてください。
ワンランク上のやり方を身に着けて、「算数力」を上げていきましょう。
具体的な算数の問題に関するご質問など、お子様の中学受験に関してお困りの点がございましたら、こちらのフォームからご質問を承ります。
お寄せいただいたご質問へは当ブログ上にてご回答させていただきます。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の1題速さ
難易度★★★★☆
〈図1〉のように、一本道の上に①から⑤のチッェクポイントがあります。
A、B、C、Dの4つの区間はそれぞれ600m、1200m、600m、1200mです。
名門君と目白君が、A、B、C、Dの4つの区間を次のルールで進むことにしました。
<ルール>
- 目白君が先にチェックポイント①を通過する。
- 目白君は①から④のチェックポイントを通過する際、そこを通過した時刻と、そこから先の区間の速さを記録し、その通りに進む。
例えばチェックポイント①で、「12:00、分速80m」と記録した場合、A区間は分速80mで進むことを示す。 - 目白君は各チェックポイントを通過する際、そこから先の区間の速さを自由に決めることができる。
- 名門君は目白君と同時にチェックポイント⑤に到達することを目指す。
- 名門君の速さの決め方は各チェックポイントを通過する際、そこに書かれた速さのまま目白君がチェックポイント⑤まで進んだとした場合に、同時に着くような速さに決める。
例えばチェックポイント④を4分前に目白君が通過していて、速さが分速240mの場合、名門君の速さは分速1200mとなる。
午前10時に目白君がチェックポイント①を通過し、その6分後に名門君もチェックポイント①を通過しました。
そして2人は同時にチェックポイント⑤に到達しました。
以下のことがわかっています。
- 目白君も名門君もA区間の速さを最後まで保ったとしても、実際と同じ時刻にチェックポイント⑤に到達した。
- 目白君のA区間の速さと、名門君のD区間の速さは等しかった。
- 目白君は4つの区間の速さが全て異なっていた。
- 目白君と名門君は同じ時刻に②~④のどこかのチェックポイントに到達していた。
- D区間の目白君と名門君の速さの比は「5:6」だった。
(1)2人がチェックポイント⑤に到達した時刻を求めてください。
(2)名門君がチェックポイント①と目白君のちょうどまん中にいた時刻を求めてください。
解答が表示されます