VOL.120【受験お役立ち情報】 -夏休みの過ごし方-
中学受験は、小学受験を経験しなかった場合、初めての入学試験になると思います。
これから先の長い人生で、いくつも試験を受けなければなりませんが、中学受験が最初の試練と言えるかもしれません。
当たり前ですが、小6の夏休みも初めてなわけです。
ほとんどの受験生が、この夏をどのように過ごしたら良いのかの明確な「答」のないまま、気がつけば夏休み真っただ中という状況ではないでしょうか。
実はこの「答」は、長年受験指導に携わってきた私にとっても「決まった法則」があるわけではありません。正直なところ「人それぞれ」としか言いようがありません。
というわけで、今回の「受験お役立ち情報」は世間で言われている「夏休みの過ごし方」について、私の意見を述べたいと思います。
◎夏休みのスケジュールをたてる
できればやった方が良いでしょう。ですが、色々と問題があります。
塾に通っている場合はあまり気にしなくても良いかもしれません。私が小学生の時は完全に無計画でした(あまりお勧めしませんが。)。塾に行き宿題をこなして終わりです。それでも夏期講習の最終日に見た夕日は今も覚えています。「俺はやったぞ!」という充実感に浸りながら、夕日の赤を自分の内側に秘めた闘志と重ねていたような記憶があります。
夏休みの過ごし方が良かったか悪かったかを決めるのは、夏休みが終わった時の本人の気持ちかもしれません。
そういった意味では「無理なスケジュール」を立ててしまい、満足にこなすことができなかった時は「心のケア」が必要になるでしょう。
「そんなことならスケジュールをもう少しゆったり組んでおけば良かった」と後悔しても後の祭りです。
かといって、あまりゆるいと成果が上がらないかもしれません。
理想はこなせる範囲ギリギリのスケジュールをたてることですが、なかなか難しいでしょう。
では、「10:00~11:00→算数」という具合に、やることを細かく決めないスケジュールはどうでしょうか。学校の時間割のようなものですね。
できる側の受験生にとっては不要なスケジュールになりそうです。
元々、自分が今何をすべきかを把握することに関して優秀なので、ザックリとしたスケジュールは頭に入っているも同然なはずです。
では勉強があまり得意でない受験生にとってはどうでしょうか。
この場合は具体的に何をどれ位やったら良いかがハッキリしないため、はかどり具合が悪くなる恐れがあります。
ですから「今日は問題集の何ページから何ページまでをやる」といった指示があった方が良いのですが、今度はそれを時間内にこなせるかどうかという問題が生じます。
何とか終わらせるために答を丸写し、なんてことになると本末転倒です。
ここまで見てきて、スケジュールを立てることはそんなに簡単ではないことをお分かりいただけたでしょうか。
実はスケジュールには「1日」と「全体」のスケジュールがあり、その両方をきちんと立てられるのが理想です。
個人的には「全体のスケジュール」をカッチリ決めるよりも「努力目標」を設定して、精神的な負担を軽くするやり方のほうが良いのかなと思っています。
私のお勧めは「予定」は立てても立てなくてもどちらでも良いのですが、「何をやったかを記録する」というものです。
その上で「前日→当日→翌日」の流れをつくります。
例えば「前日の復習は20分はやる」「復習は軽めにし、続きをきちんと消化する」など、前日の結果を踏まえ当日やることを細かく決めるのです。
もちろん、「10日で問題集を1冊終わらせる」といった大まかな目標設定がしてあることが前提となります。
また、記録をすることで、「どれ位勉強時間を確保できたか」「四教科のバランス」といったことを見ることもできます。
どのようにするにしても、完全に本人任せということではなく、指導者や保護者が「いつ何をどれだけやったか」を把握できる体制作りが大切だと思います。
◎夏休み中に弱点を克服する
これができたら良いのは明白です。
比較的弱点がはっきりしやすく、またその克服が容易な科目に「理科」があります。
過去に「電流の計算問題」が全くわからないという生徒さんに30分ほどアドバイスをしたら、次のテストで満点を取ったという例もあります。
では「算数」の場合はどうでしょうか。
これができれば秋の模試ではかなりの成績アップが見込めそうです。
実はこちらもそんなに簡単ではありません。
「算数」は「理科」と異なり分野が完全に独立しているわけではないので、その分野特有の解法を学習したからと言って、必ずしも即効性があるとは限らないのですね。
よくある苦手分野「ニュートン算」「流水算」なども、解けない(間違える)原因がその分野に限ったものではない可能性が高いのです。
「ニュートン算」ならば「時間当たりの仕事量を①とおく」ができていなければ、それは「ニュートン算」というよりも「仕事算」の問題です。
また、「流水算」の「グラフ」が描けないのならば、それは「グラフ」を描く練習が不足しているのであって、「流水算」ができないわけではないかもしれません。
本人が認識している「苦手分野」と、「本当に弱い分野」がずれている場合は指導者が補正してあげる必要があります。
また、「苦手」は自分で作り出している「幻影」かもしれないのです。私は少しできない位ならそれを「苦手分野」とは捉えないことにしています。無視して各分野を万遍なくやっていると大抵の場合「苦手意識」は無くなり普通にできるようになります。
ただ、最優先で手を打たないとまずいケースもあります。以下に代表的な例を挙げます。
①分数の計算が完璧ではない
②割合の問題の読み取りに難がある
③文章題を解くための線分図等が描けない
④数の性質や規則性の知識が決定的に不足している
⑤作図ができない
⑥公式が覚えられない
代表的なものを挙げましたが、これらは最終的に身に着けなければならない内容の土台となる部分なので、今すぐ弱点の克服に着手してください。
具体的な方法については、本ブログで取り上げたものについては参考にしていただければと思います。
「弱点克服」ということについては、「専門家」でなければ手に負えないかなりデリケートな問題だと思います。
◎過去問は夏休みから解き始める
最難関校を目指すのなら、夏休みから過去問演習を始めるのが理想です。
一般的な受験生も夏休み中に1度は過去問を解いておくと良いでしょう。
ここで問題になってくるのが、ほかにやるべきこととの兼ね合いと、過去問を解いてみたは良いが、点数が取れなかった場合です。
これらの問題はケースバイケースとも言えますが、一般論を書いておきます。
●他の勉強との兼ね合い
合格圏内に近ければ近いほど過去問演習の優先度は高くなります。
なぜならば、「合格圏内にある=基本ができている」と考えられるからです。
「基本完成」後は「志望校対策」と「得点力アップ」が大切であることは本ブログでも述べてきました。
夏休みから「過去問演習」が始められるのは順調にきていることの証です。
「基本」がまだ完成の域に達していない場合は「基本の完成」を優先してください。
過去問演習は秋以降でも問題ありません。
ただし「基本」とは「志望校合格に必要な最低限の知識とそれを運用する力」なので、どれぐらいの「レベル・範囲」の「知識・力」が必要なのかを肌で感じておくに越したことはありません。
夏休み中に1度は過去問を解くことがお勧めになります。
●点数が取れない
大抵の学校では受験者平均点と合格者平均点が公表されています。
この点数と自分が取れた点数を比較するのですが、初めのうちは受験者平均点くらい取れていれば問題ありません。
普段の学習を合格者平均点を超えるイメージで取り組んでいけば合格の可能性が上がっていくことでしょう。
また、過去問演習はその達成度をみる意味もあります。
問題なのは受験者平均点を大きく下回ってしまったケースです。
基本的にはこういった場合は力を溜めた方が良いです。
最悪なのは、何回やっても点数が取れず、すっかり自信を無くしてしまうことなので、一旦ストップする勇気も必要です。
結果を公表していない学校については専門家に判断してもらうしかないでしょう。
以上、「夏休みの過ごし方」でよく言われていることについて私の考え方を述べました。参考にしていただけると幸いです。
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