VOL.341〈分野別〉知識の確認1 ― 数の性質 ―
受験算数で大切なことはいくつもありますが,その中の一つに「知識の充実」があります。
常々言っている「力をつけましょう」ということについても,考えるためのツールがあってこそです。ですからなるべく早い段階で知識を整理しておくことが,受験戦略上非常に重要となります。
そこで,今年はこのタイミングで皆さんの知識の整理の助けになるような内容を書きたいと思います。
題して「〈分野別〉知識の確認」です。1回目は「数の性質」について書きます。
このシリーズは各分野の中から,知っていると役立つ知識を3つ(「初級」「中級」「上級」)紹介します。
例題等を交えて丁寧に説明しますので,これを参考にして頂き御自身の知識の整理に役立てていただければと思います。
それではスタートしましょう!
「初級」
◎最大公約数は差の約数のうちのどれかである。
〈例題〉
2021と2491の最大公約数を求めてください。
〈解説〉
このまま共通の約数を見つけようとしてもなかなか大変そうです。
こういった場合は「差をとる」ことを考えましょう。
2491-2021=470
470=2×5×47
この時点で答はほぼ47と見抜くことが可能でしょう。なぜならば2021も2491も2と5の倍数ではないことが明白だからです。
確かめると
2021=43×47
2491=47×53
なので最大公約数は47と確認できました。
※なぜそうなるのかの説明をします。
小さい方の数をA,大きい方の数をB,最大公約数をPとします。
割算の根本理解の問題ですが,考え方が2つあります。÷2を例にすると
① 2等分する
② 2がいくつとれるか
この場合②の考え方を使います。
AはPで割り切れます。そこからさらにPをとっていくとBに達するときもちょうどピッタリとれるので,PはAとBの差の約数ということになります。
「中級」
◎整数Aを9で割ったときのあまりは,整数Aの各位の数字を足したものを9で割ったときのあまりに等しい。
〈例題〉
ある製品100個入の箱が37箱あります。その中の不良品を取り除き9個入りの箱に9個ずつ詰め直したところ最後の箱には3個しか入りませんでした。
不良品を9個入りの箱に9個ずつ詰めていくと最後の箱には何個入りますか。
〈解説〉
不良品の個数は決まりませんが,9で割ったときのあまりは決まります。
100×37=3700
を9で割ったときのあまりは
3+7=10
を9で割ったときのあまりです。
良品を9で割ったときのあまりが3なので,不良品を9で割ったときのあまりは
10-3=7
となり
(答)7個
※なぜ9で割ったときのあまりが各位の和を9で割ったあまりに等しいか4ケタの時を例に説明します。
4ケタの数をABCDとします。またA+B+C+Dを9で割ったときのあまりをα,9の倍数を⑨とします。
ABCD→
1000×A+100×B+10×C+D
=999×A+99×B+9×C+A+B+C+D
=9×(111×A+11×B+C)+(A+B+C+D-α)+α
=9×(111×A+11×B+C)+⑨+α
=9×(111×A+11×B+C+①)+α
となり,あまりが一致しました。
「上級」
◎整数Aを連続する整数の和であらわす方法はAの1以外の奇数の約数の個数に等しい。
〈例題〉
63を連続する整数の和であらわします。足し算の形で全て求めてください。
〈解説〉
63の約数は{1,3,7,9,21,63}の6個で,1以外の奇数の約数は{3,7,9,21,63}の5個です。
答が5通りあることがわかります。
3→21が3個とみなして
20+21+22
7→9が7個とみなして
6+7+8+9+10+11+12
9→7が9個とみなして
3+4+5+6+7+8+9+10+11
21→21×3を10.5×6に変形し平均10.5が6個とみなして
8+9+10+11+12+13
63→奇数は2つに分ければ
31+32
※なぜそうなるのか簡単に説明します。
奇数個…上の3,7,9のケースでこれは明白です。
偶数個…上の21,63のケースで偶数個の場合,平均が(整数+0.5)になるので,奇数÷2でなければなりません。
1以外の奇数の約数は上のどちらかの方法で連続する整数の和であらわすことが可能です(ただし大小関係より,両方の方法であらわすことはできません。)。また,どちらも偶数では無理なので,整数Aを連続する整数の和であらわす方法はAの1以外の奇数の約数の個数に1対1で対応しています。
いかがでしたでしょうか。
しばらくはこの企画を続け,皆さんの知識の充実のお手伝いをしたいと思います。
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