VOL.99【計算名人への道】 -ミスを防ぐ

時計算


今まで6回にわたり書いてきた【計算名人への道】ですが、今回が最後の仕上げです。

テーマは「ミスを防ぐ」です。「ミスを修正する」こともあわせて考えてみます。

まずは、なぜミスが起こるかを考えてみます。

①練習不足・経験不足
②不注意
③勘違い
④パニック
⑤疲労  

ほかにも色々あるでしょうが、代表的なものを挙げてみました。

①は、そもそも小学生は大人に比べてミスしやすいことを示しています。
人生の経験が浅いので、それはどうしようもありません。
経験不足は練習でカバーすることになるでしょう。
逆に言えば、ミスしなくなるまで練習すればよいということです。

②の不注意に原因がある場合があります。
小学生の場合は慣れてくると気を抜くことがよくあり、そこでミスが出てしまうパターンです。
このパターンは成績が良好な場合にもあらわれるので気を付けてください。
また、慣れて気を抜いているわけではないのですが、心の隙間のようなものが生じてミスをしてしまうこともあります。
もしかしたら人間であるかぎりこの部分はどうしようもないかもしれませんが、不注意に気を付けるにこしたことはないでしょう。
ミスしそうなところでは集中力を高めるようにしましょう。

③の勘違いは、なかなか厄介です。
最初に間違ったとらえ方をしてしまうと、その後の方向が誤ったものになってしまいます。
そしてそれを修正することは困難です。
最初の入りが非常に重要なので、少し丁寧に問題を読み込む必要があるでしょう。

④は、強いプレッシャーを感じる場合に陥りやすいです。
「模試で間違える」
  ↓
「親に怒られる」
  ↓
「次は間違えないように(プレッシャー)」
  ↓
「パニック」
  ↓
「また間違える」
というような「負のスパイラル」に陥らないように、過度のプレッシャーをかけないように注意していただきたいと思います。
また、人は想定していない事態に遭遇するとパニックに陥りやすいので、ある程度経験を積むことも大切です。

⑤は、当たり前なのですが、意外と見過ごされていると思います。
睡眠不足は論外です。
ミスどころか脳の成長そのものが損なわれる可能性もあるそうです。
また、病気を患うと完全に回復するまでの間はどうしてもパフォーマンスが落ちてしまいます。
体調管理は受験が終わるまで、徹底しなければなりません。
意外と問題なのはオーバーワークによる疲労です。
本人は一生懸命なのに、結果として逆効果になっています。
希なケースですが、周りの人間がセーブしてあげなければなりません。

以上、見てきたようにミスには原因があるので、その元を断つ意識を持つようにしてください。
ミスをしたならばそれを受け入れ、次は間違えないという強い気持ちを持って対策を身につけるようにしましょう。

具体例を見ていきます。

i)7+3×2=20 …× 正解は13

前から順番に計算していけば確かに20になりますが、「計算の順番のきまり」を無視しています。
①が原因と思われますが、7+3=10なので、それがこの問題の狙いと判断したという③が原因だったかもしれません。

解決策としては
7+3×2
という具合に先に計算する部分に線を引くのが良いでしょう。
この問題ではやらなくてもかまいませんが、もう少し複雑な問題に対しては必須の作業になります。

また、この計算を間違えるということは計算力が受験レベルに達していないと判断できるので、日々の計算練習を習慣化するところから始める必要があるでしょう。

ii)388×412=158856 …× 正解は159856

計算ミスの中で非常に多い、足し算の繰り上がりをうっかりしてしまったケースだと思われます。
これは①か②が関わっている可能性が高いです。
どちらにしても「繰り上がり」には注意が必要なので、普段からしっかり意識する必要があります。

また、この計算が合っているかどうかの確かめに「9で割ったときの余り」が使えます。
同じ計算を繰り返すと同じところで間違える可能性があるので、こういった確かめかたはかなり有力です。
「9で割ったときの余り」は「各位の和を9で割ったときの余り」になるのでそれを利用します。
388 … 余り1
412 … 余り7
158856 … 余り6
以上の検討から間違っていることがわかります。
余りが1少ないので、どこかで繰り上がりを落としたということまで推測できますね。

こういった普段習わないようなやり方は、自習が難しい分野であるといえるでしょう。
できれば指導者から直接教わりたいところですね。

また、この計算は
(400-12)×(400+12)
=400×400-12×12
=160000-144
=159856
と解くこともできます。
このコースなら少なくとも千の位が8になるようなことはありません。
ピンとこない方はVOL.95を参考にしてください。

今回のミスから得られる教訓は以下になります。

  • 注意すべきところは集中してミスをしないように心がける。
  • 1からやり直す以外の確かめの方法を知っておくと良い。
  • 計算の工夫によりミスを大幅に減らすことができる。

iii)(112-□)×2=201

□=115 … × 正解は11.5

これはかなりひどい間違え方ですが小数点のつけ忘れはよくあることです。
また、計算結果に小数点をつけ忘れたのか、解答用紙に書き込むときにつけ忘れたかによって対策も変わってくるでしょう。

計算結果の間違いですが、引き算の小数点は上からそのまま降りてくるだけなので、完全なうっかりだと思われます。
日頃から集中力を高めておきたいところです。

また、最終的な答を書き込むときに違ったものを書いてしまうこともよくあるのですが、これは「指差し確認」で大抵は防げます。
利き腕と反対の手の人差し指で「11.5」を指しながら解答欄に書き込めば間違えることはないでしょう。
このことは「答」はその都度書き込むべきことを示してもいるので、もし最後にまとめて答を書き込むようなことをしていたら今すぐやめることをおすすめします。

「115」という答を書いてしまうことの酷さは「検算していない」という所に行き着きます。
小学生は「112-115」はできないのですから、間違っていることはほぼ確定です。
こんな答を放っておくというレベルからは一刻もはやく卒業したいですね。

それでは最後にまとめます。

  1. ミスを防ぐ第一歩は練習量を増やすこと。
    集中すべき場所を知り、絶えず計算の工夫を狙う。
  2. ミスにはそれぞれ原因がある。
    模試等で間違えたときは「次は間違えない」という気持ちでしっかりと対策を講じる。
  3. 確かめは絶対にする。
    同じやり方をすると同じ間違え方をする可能性があるので、できれば異なるやり方で確かめたい。
    VOL.98に書いた「数の感覚」による確認も行いたい。

「計算」はこれからもずっとついてまわります。
受験生の皆さんが【計算名人への道】を参考にし「一生ものの計算力」を身につけてもらえれば幸いです。

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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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