VOL.52速さ(4)

通過算


私はいつも「どうすれば算数ができるようになるか」を考えています。
もちろん自分ではなく「教えている生徒が」です。

そこで気になるのが「大人度」です。

よく「中学受験は大人度が高いほうが有利」と言われますが、完全に間違ってはいないと思います。

精神年齢が高く、自立していて、理論的に考えることができれば、受験でも結果を残すことができるでしょう。
ただ「子どもっぽさ」の中にも色々と良い点があります。

そのひとつに「正義感が強い」ことがあります。
生徒のほとんどは、問題を解いている時、目の前に「答」があっても決して見ようとしません。
「ズルはしない」という強い意志を感じます。
自分自身に嘘をつかず、きちんと物事に取り組む姿勢は全てにおいて好影響を与えます。
(そういう意味では今世間を騒がせている人たちは「大人の中の大人」と言えるかもしれません。)

また、「集中力が凄い」ケースもあります。多少のムラはありますが、ハマッた時の威力は凄まじいものがあります。
この「集中力の高さ」は得意科目を伸ばすのに向いています。

結局、「大人であること」の優位性は、「脳が十分に成長している分だけ有利」ということなのかもしれません。

ただし、「大人っぽい考え方」をしたほうが良いケースが存在することも確かです。

以前、塾の成績が良好なのに算数があまりできない生徒さんがいたので、事情を聴いたところ次のような答えが返ってきました。
「塾のテストはどこがでるか大体わかります。
直前に詰め込んで点数を稼いだので、実力は成績ほどはないんです。」

実に「大人」です。
「傾向と対策」が万全で自分の実力も把握しています。
当然受験にも向いていて、きっちり第一志望に合格という結果を残しました。

結局何が言いたいかというと、「真っ向勝負だけが全てではなく、時には要領のよさを生かすのもあり」ということです。

今回取り上げる分野は「速さ(前回の続き)」ですが、今まで書いてきた「大人っぽさ」が生かせる分野だと思います。

「速さ」は
① 速さの3公式
② 旅人算
③ 速さと比
④ グラフ
のように学習し、その後
⑤ 通過算
⑥ 流水算
⑦ 時計算
とここまでやってある程度全体がカバーできたといえます。

前回は「速さと比」を中心に書きましたので、今回は⑤~⑦について書きたいと思います。

まずはワンポイントアドバイスです。

通過算 列車の長さがどのような影響を与えるかがポイントです。必ず情景図を描くようにしましょう。その際列車の前後(進行方向)がわかるように描くと便利です。わかりやすくするために旗を立てるのも重要なテクニックです。
流水算 川の流れがどのような影響を与えるかがポイントです。線分図は「速さの線分図」を描くのが基本です。縦や斜めに描いたりすることもありますが、自分に最もしっくりくるやり方で良いと思います。複雑な問題はグラフを描くことで解決するケースが多いです。
時計算 池のまわりをまわる旅人算と同じです。しかも2人の速さはいつも同じですから普通の旅人算よりも簡単かもしれません。ただし難点が2つあります。
① 速さが「角速度」
② 答が分数になることが多い
この2つは必ず克服しなければならないので、ある程度の量はこなすようにしましょう。

これらの分野での「大人っぽさ」の生かし方ですが、それは「解放の糸口の探り方」で発揮されます。

例えば「通過算」ならば、「列車の長さがあることによって(長さのない場合にくらべ)何が変わるのか」という見方をするのです。

たまに列車の長さを無視して答を出してしまうことがありますが、「大人の発想」ではそのようなことはありえないわけです。

他分野でもそのようなことはあります。
「植木算で1ずれた」なんてことも「大人の発想」では「ありえない」ことなのです。

ただし何事も行き過ぎはいけません。

「時計算」で短針と長針が重なるまでの時間は
「短針と長針の差(角度)」÷(「長針の分速(6)」-「短針の分速(0.5)」)
で求めることができます。
5.5で割ることになるのですが、大抵は割り切れません。
そこで分数になるのですが「÷5.5」は「× 15.5」にするまでは常識です。
そこで「15.5」の分母と分子に10ではなく2をかけて「× 211」とするというのが最終的な形になります。

行き過ぎというのは式を立てるときにいきなり「211」をかけてしまうことです。
「時計算」は基本的には「追い越し」ですが「出会い」になることもありますし、「速さ」が通常と異なることもあります。
そういったことの確認の意味でも、まず「6-0.5」で式を立てることがおすすめになります。

このような「大人のバランス感覚」をぜひ身に着けてください。

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今週の1題通過算

流水算の問題はVol.1にあります。
難易度★★★★☆

ある日名門くんは家族で旅行に行きました。お父さんが車を運転し、名門くんは後部座席で外の風景を楽しんでいました。

車が高速道路に入ってすぐ、渋滞が始まり、車は一定の速さ(この速さをAとします)でゆっくりと進みました。その高速道路は線路と平行に走っていたので、名門くんは電車を観察することにしました。車がAの速さになってすぐ、前方から特急列車が、後方から普通列車がやってきてちょうど名門くんの目の前ですれ違いを始めました。すれ違いを始めてから6.4秒後にちょうど名門くんの目の前で2つの列車の最後尾がすれ違いを終えました。

しばらくすると渋滞が解消されたので、名門くんのお父さんは一定の割合で速さが増加するように(時間あたりの速さの増え方が一定になるように)スピードをあげ、ある速さ(この速さをBとします)に到達した後はずっとその速さを保ちました。

お父さんが速さを上げ始めたその時、後ろから来た普通列車に追いつかれ、一旦は前に出られたのですが、速度を上げ始めてから18秒後に追い抜くことができました。

車がBの速さになってしばらくして前方を走る普通列車に追いつきそうになりました。その時、後方から特急列車がやってきました。名門くんの車が普通列車の最後尾に並んだ時、特急列車の先頭がそこに到達し追い越しが始まりました。追い越しが始まって32秒後にちょうど名門くんの目の前で特急列車の最後尾が普通列車の先頭を追い越しました。

ただし、特急列車の長さは240m、普通列車の長さは80m、それぞれの速さは一定であるものとします。

(1) 特急列車の速さは時速何kmですか。

(2) 名門くんのお父さんがAからBまで速さを上げるのに要した時間は何秒ですか。

クリックすると
解答が表示されます
<解答> (1)時速108km  (2)6秒
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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