VOL.335【夏休み特集】 ― 失敗を予防する ―
7月に入りました。
塾のカリキュラム学習は,遅いところでも全範囲を終了することになります。夏休みに総復習を行い,いよいよ範囲のないテストが当たり前の時期に突入していきます。
毎年,夏休み以降の範囲のないテストに苦戦する受験生が存在します。
「習った直後なら点数が取れるが,範囲が取っ払われるころには解法を忘れてしまい点数が取れない。」といったところでしょうか。
今回はこのようになってしまう原因を考え,そうならないためには夏休みをどのように過ごせば良いかを考えてみたいと思います。
こうなってしまった場合の対処法の結論はほぼ出ていて,「やり方を変えるべき」となります。
もし時間が十分にあれば,このような状況はそんなに悪くないかもしれません。なぜなら,いままでの勉強のやり方が根本的に間違っていたことを教えてくれた可能性が高いからです。
しかし実際は「夏休み」という実力アップの最大のチャンスを過ぎてしまっているので,「そんなことなら,もっと早く言ってくれ!」となるわけです。
なぜやり方を変えるべきかと言うと,以下の点でうまくいっていないと考えられるからです。
①記憶の定着
②解法の検索
③知識を実際に解くことに活かす(力の養成)
④応用力を身につける
簡単に解説します。
①記憶の定着
例えば三角形の面積を求める公式は「底辺×高さ÷2」ですが,これを忘れてしまうとさすがに厳しいです。ただ,公式だと円すいの側面積あたりは怪しい受験生も多いですから,「ただ覚えておけば良い」という単純な問題では無い気がします。
ここでは記憶を定着させるにはどうすれば良いかを考えます。
復習が肝心ということでは衆目の一致するところだと思いますが,問題はそのタイミングでしょう。記憶が最も定着するのは思い出した時という説があるのですが,これは私の経験とも一致するところです。個人的には,覚えているか忘れているかギリギリ位の時期に思い出せれば定着度はかなり高いと感じています。塾の場合は習った翌週に確認テストのようなものがあり,場合によっては1カ月後にも復習テストがあることが多く,理にかなっているように思います。
ただ,中学受験の算数は範囲が広いですから,1カ月ごとに全ての範囲がしっかり定着しているかどうかをテストするのは物理的に無理でしょう。ですから,『塾でしっかりやっていても記憶が抜けていた』ということも考えられると思います。
以上からも個人的には,記憶の定着には基本書の繰り返し学習が最善と考えています。
※基本書を使った学習法はVOL.304に詳しく書いてありますので参考にしてください。
また,記憶の質も重要です。所謂「丸暗記」は定着度が低いと思われます。
算数の場合は「理解を伴った記憶」が常識であり,覚えたものがなぜそうなるのかを他の人に説明できれば,そのことについての記憶は大丈夫と考えられます。
実は真面目な受験生ほど「丸暗記」に走る傾向があるように思います。「丸暗記」は手っ取り早くテストで点数がとれるので,範囲があるテストではそれなりに重宝されるのですね。テスト漬けの弊害といえるかもしれません。
②解法の検索
あまり聞いたことがないかもしれませんが,かなり重要なテーマです。これは記憶の位置の話に置き換えることができると思っています。以下『タンス』を例に説明します。
頭の中に『タンス』のようなものがあり,その中に記憶している情報が入っているとします。問題を解く際は『タンスの引き出し』から必要な情報を取り出し,それを使うわけです。
そのときに『どの引き出しにどの情報が入っているか』が分かっていないと「この問題の解き方は覚えたはずだけど,どうするんだったっけなぁ??」となってしまうかもしれません。
実は単元別に学習することはこのことと関係していると思われます。
記憶するタイミングと引き出しの位置が結びついていると考えられるからです。単元と位置が繋がっていれば取り出すのは容易ですから,解法を引っ張り出してくるのに苦労はいらないでしょう。
ただ,記憶する際にある程度引き出しの位置が決まってしまうとすると,やり方によってはかなり混乱する可能性があります。個人的に危険だと考えているのは,記憶が定着しきっていないうちに単元をごちゃ混ぜにして復習することです。ご丁寧にこれをキッチリ復習して,タンスの位置もごちゃ混ぜになってしまったら…
たまにやればやるほどできなくなるといった話を耳にしますが,これがその原因かもしれませんね。
※VOL.305に「検索」についての記述がありますので参考にしてください。
③知識を実際に解くことに活かす(力の養成)
この「力」が中学受験では最重要であることはこのブログ連載当初から言ってきたことです。直近ではVOL.330でこの「力」について触れています。参考にしてください。
何度も書いている私の考える基本である「志望校の合格に最低限必要な知識とそれを運用する力」の『力』の部分ですね。
いくら知識があってもそれが使えなければ宝の持ち腐れになってしまいます。そうならないように「知識」を学んだときはそれとセットで問題を解く練習を積まなければいけません。算数が「実技科目」と言われる所以ですね。
④応用力を身につける
基本問題は解けるが応用問題はからっきしダメという悩みもよく聞きますが,根っこは同じで「記憶の甘さ」と「力の不足」が原因と考えられます。「力の養成」は即「応用力」に繋がると考えられるので大いに『力』をつけて下さい。
また応用問題は基本問題に比べ「広さ」「や「深さ」があると考えられるのでその部分での対策も必要でしょう。「応用力」の養成はなかなか難しく,人と人の関連の中,二人三脚のようなイメージで育成していくのが「金田流」でもあります。
※ここに書いた一連の流れはVOL.304, VOL.305, VOL.306で触れており,VOL.307で過去問演習に繋げています。直前期向けの記述ですがそのまま前倒しで夏休みに使っていただいて問題ありません。ぜひご活用ください。
以上見てきたように,「目先のテストで点数が取れればそれで良い」といった姿勢で勉強していると秋以降の苦戦が目に見えています。
夏休みは絶対にそのようなことがないように,「本格的な勉強」を徹底してください。
「本格的な勉強」については次回じっくり書くことにします。ご期待ください。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。