VOL.309この時期 思い通りに成績が上がってない受験生へ
前回、冬休みのお勧め学習法を書きました。
前提が、算数の学習がある程度進んでいて、冬休み以降は調整に専念すれば良いというものでした。
今回はお約束通り、学習がそこまで進んでいない受験生を対象に書きたいと思います。
まず、把握しておかなければならないのは、受験する学校の難易度の範囲です。
話を分かりやすくするために、算数の問題の難易度が1〜10の10段階(1が易、10が難)ということにします。
学校によってこの出題される問題の難易度の範囲に違いがあるのは当然のことでしょう。
1〜5という学校もあれば6と7だけという所もあるかもしれません。
一般的に難関校と言われる学校は数字が大きい傾向にあります。
同じ1〜5でも1が多いのと5が多いのでは全く異なる試験ですし、合格に必要な難問耐性(どれだけ難しい問題に対応できるか)も変わってきます。
通常は8割程度解ければ良いので、難しい方の2割をカットして残ったものの最大値がクリアできるだけ難問耐性があれば、合格への視界が良好と言えましょう。
具体的には1から10が全部一つずつなら、8まで解ければ十分だし、1〜6が8個、10が2個なら6まで解ければ8割ですから、難問耐性は6で良いことになります。
また、上の話は8割を目標にしていますが、7割や6割でも良いことが多いので、最低限必要な難問耐性は上の例よりは下がる事が多いでしょう。
最悪なのは、6と7が出題の大半を占めるのに5までしか対応できる難問耐性がないような場合です。
模試の判定は悪くないのに、最終的に結果が出ないパターンです。
極端な話でしたが、合格に必要な最低ラインに届いていないとまずいということは理解していただけたと思います。
今回はこの「まずい」状態の時にどう手を打つか、を私なりに考えたいと思います。
このような受験生の冬休みの目標はズバリ、「合格に必要な最低ラインを越える」です。
これが出来なければ「受験校変更案件」となってしまうので、全力で取り組みましょう。
まず、最低限やらなければならないことは、「弱点」の補強です。
私は普段の学習では「弱点」はあまり意識しない方が良いと主張してきましたが、現に「弱点」を意識せざるを得ない受験生は存在するでしょうし、それなりの対策を講じなければ不味いことが殆どでしょう。
「弱点」をいくつかのパターンに分類し、その対策を考えていきます。
①難所での躓き
算数には難所があり、そこでわからなくなってしまう受験生が一定数います。
よくある難所を易しいものから並べると以下になります。
分数 割合 平面図形 速さ 数の性質 立体図形 場合の数
そして、一旦躓いてしまうと、それよりも右に書かれている分野に関してもよくわからなくなるという傾向があるので、最初の3つで躓いてしまうと、算数が苦手科目となってしまいます。
また、右の分野の理解に左の分野の理解が必要というケースも多いです。
例えば、割合がわかっていない原因を探っていくと、分数がわかっていなかった、ということは良くあります。
ここで大切なのは理解の妨げになっていることを探り当て、そこを補ってあげることだと思います。
基本中の基本をチェックすることが近道である可能性が高いです。
ここを改善できる可能性があるのは我々のような指導者でしょう。
②上級分野が苦手
上の①と似ているのですが、前提となる分野があり、その上に成り立っている分野を私が勝手に「上級分野」と呼んでいます。
例えば「ニュートン算」は、通常の「仕事算」よりも複雑なので「上級分野」です。「流水算」、「動く図形」や「図形の規則性」も「上級分野」です。
この「上級分野」で躓くのも、普通と言えるでしょう。
複雑さが増したり、複数の分野の融合となっているのですから、根本的に難しいのです。
では、どうやって解消するかですが、これは慣れるのが一番でしょう。
まずは納得するまで量をこなす。
その際、複雑さがほぐれるような丁寧な解説等があれば安心でしょう。
但し、最終的には自力で解決しなければ「力」になりませんので(VOL.300を参照してください。)そこには注意が必要です。
学校によっては「上級分野」が出題の主力(例えば桜蔭)というところもありますから、ここはしっかりと対策をするようにしましょう。
③応用問題に弱い
少し前に書いたVOL.305やVOL.306と関連する問題です。
まるっきりの定型の問題から外れた時にどうするか、ということですね。
この部分の習熟度が算数の力に直結すると思われるので、最後まで諦めずにしっかりと積み上げて欲しいところです。
まずは解決しやすいところから手をつけていきましょう。
殆どの場合、基本的な知識が甘いので、基本書の反復で知識を固めることが先決だと思います。
そうするとVOL.304に書いたことが重要になるでしょう。
その上で「速度」、「検索性」の向上を図りながら経験を積んでいけば、ある程度の「応用力」は獲得できると思います。
さて、ここまでで「弱点」を克服する目処は立ったと思います。
ここから「合格に必要な最低ライン」を越えることを考えていきます。
大切なのはほんの少しでも良いから「越える」ことで、足りないのは論外、大きく越えるのも時間と労力の無駄かもしれません。
狙ってこのラインを少しだけ越えるためには、指導者の存在が不可欠でしょう。
指導者がラインを完全に把握した上で、受験生の現在の実力、残り時間、予想される成長等を総合的に判断し、今何をやるのかを決定するのです。
これが出来れば、今はまだ実力が不足しているとしても、試験本番までに間に合わせることも可能なのではないでしょうか?
具体的には実力よりも少し上の問題に取組むことを繰り返すのが良いでしょう。
その際、志望校の出題分野の傾向に合わせれば一石二鳥です。
問題を解くペースを指導者が管理し、最終的に合格ラインを越えるように導ければ、理想的です。
ただし、かなりの時間を取られることも確かでしょうし、点数を上げやすい「理科」「社会」が手薄になるかもしれません。それなりのリスクを伴うのも事実です。
最終的な判断は受験生がすべきだと思います。
第一志望は貫くべきだとは思いますが…
算数の実力を上げることが、受験全体の中にあっても重要であったことが再認識されることとなりました。
この時期算数が足りないのはかなり厳しいことなのです。
それでも、今まで頑張ってきた「力」の源になっていた「第一志望への想い」。
これは最後まで貫いて欲しいのです。
ここで諦めてしまっては一生後悔が残る…
そんな悔しい想いをしてもらいたくない。
金田は受験生の皆さんの「第一志望への想い」を応援します。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。