VOL.237数学から考える受験算数(3)乗法公式
かなり前のことですが、分数の掛け算の授業をおこなう機会がありました。
真分数と仮分数に関しては特に問題はありませんが、帯分数は仮分数に直してから計算するのが普通です。
実際、ここまでは良かったのですが、「帯分数×整数」は「分配法則」を使う、というのを見て、少し危険だなと思いました。
確かに「帯分数×整数」は「分配法則」を使うのが良さそうなのですが、初めて習うときにここまでやると、混乱が生じる可能性が高いと直感しました。
案の定、練習で「帯分数×帯分数」をやってみると以下のような間違った計算をしてしまいました。
2 1 3 ×2 1 7 =2×2+ 1 3 × 1 7
=4 1 21
ちなみに正解は5なのですが、この間違え方もわからなくはないです。
むしろ私の方が困っていて、なぜ上の計算方法では駄目なのか説明するのが困難な状況でした(相手が低学年生だったので)。
多項式×多項式は中3の範囲なので、理解してもらえるかどうか微妙です。
面積図を使えば説明はつきますが…
こんな時、中学で習う「乗法公式」が使えたらと心底思いました。
というわけで今回は「乗法公式」をテーマとしたいと思います。
中学で主に習う「多項式×多項式の乗法公式」は以下になります。
①(x+a)(x+b)=X2+(a+b)x+ab
②(a±b)2=a2±2ab+b2(複合同順)
③(x+y)(x-y)=X2-y2
特に重宝するのが③で、因数分解でお世話になることが多かったですよね。
中学入試でも計算問題でよくお目にかかります。
1013×987=(1000+13)×(1000-13)
=1000000-169
=999831
のようなものは頻出でしょう。
さて、問題はこれらの公式を学習しておいたほうが良いのかどうかです。
結論から言うと、①と②は順番に4回掛け算をすることを理解しておけば良く、③に関しては積極的に使えるようにしておいた方が良いというのが私の見解です。
①と②はあまり得できないのに対し、③は明らかに得です。
図形で言えば「ヒポクラテスの三日月」みたいなものです。
本ブログの「今週の1題」でも何度も取り上げています。
vol.44、vol.45、vol.95、vol.145に③の公式を使った問題があるので、是非解いてみてください。
以前このブログでも取り上げていた「インド式計算」も「乗法公式」を利用しているように思います。例えば
37×33は3×4=12と7×3=21なので1221
になりますが、上の①を利用すれば
X=30,a=7,b=3ですから
30×30+(7+3)×30+7×3=3×4×100+7×3
になりますね。
ブログの本文で詳しく説明してありますので、VOL.93~vol.95を読んでみてください。
最後に、4回掛け算する実例を冒頭の「帯分数×帯分数」でやってみましょう。
2 1 3 ×2 1 7 =2×2+2× 1 7 + 1 3 ×2+ 1 3 × 1 7
=4+ 2 7 + 2 3 + 1 21
=4+ 20 21 + 1 21
=5
確かに5になりました。
まさかこの計算をこのようにやる人はいないと思いますが、「多項式×多項式」の面倒さを感じるには良い題材だったと思います。
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