VOL.236数学から考える受験算数(2)マイナス(負の数)について
新中学1年生を指導することがちょくちょくあります。
私の感覚だと、中学数学よりも受験算数のほうが高級なことをやっているので、いかに序盤をサラッと指導して、「2次方程式」以降まで進めるかを考えていることが多いです。
特に最初にやる「正負の数」は、ほとんど時間をかけません。
なぜならば、中学受験でトップクラスの成績だった生徒さんは「負の数」の感覚が身についていることがほとんどだからです。
という訳で、今回取り上げる「マイナス」はもうわかっていて必要ない可能性もあるのですが、そんな習っていないことはやりたくないという受験生もいるでしょうから、少し丁寧に説明していきたいと思います。
「数学」というのは「数」や「図形」を扱うのですが、「図形」はともかくとして、「数」に関しては扱う領域がことあるごとに拡がっていきます。
その第一弾が「マイナス(負の数)」で、一応小学生の算数の範囲では無いものとして扱われている領域です。
ただ、個人的には「マイナス」を中学生まで引っ張ることにあまり意味を感じていません。
むしろ、わかりにくくしている可能性すらあると思っています。
言葉で「マイナス」を使わなくても良くしているケースも多いです。
実例を挙げましょう。
〈例題1〉
A君はコップを運ぶアルバイトをしました。
きちんと運ぶと1個当たり10円もらえますが、割ってしまうと1個あたり30円払わなければいけません。
100個運ぶうちのいくつかを割ってしまったため、Aくんがもらえたのは600円でした。A君が割ったコップは何個ですか。
〈解説〉
罰則付きつるかめ算です。運んだときと割ったときでは10円もらえなくなるうえに30円払うことになるので、出入りで
10+30=40(円)
収入が減ることになるのがポイントです。
ただし、「マイナス」を使えばいつものつるかめ算と同じで「10」と「-30」の差ですから
10-(-30)=40
となり、言葉や考え方を変えることなく解くことができます。
(10×100-600)÷40=10(個)…(答)
上記の考え方をしていた生徒さんが過去にいて、その生徒さんは面積図のたてに「-30」のような数字を入れていました。
※さすがに「図」としてはおかしいので、数字だけで考えたほうが良いかもしれないといったアドバイスは行いました。
数字を「マイナス」にするか、考え方(言葉)で処理するかだけの問題で、内容にはほとんど差はありませんでしたね。
ここで
-(-A)=+A
のように
(-)×(-)=(+)
が出てきましたが、これも式の処理をしているとたまに出てきますね。
線分図を描けばわからなくもないですが、知識にしておいたほうが明らかに得です。
〈例題2〉
Aの所持金はBの所持金の2倍より200円少なく、Cの所持金はBの所持金の7倍からAの所持金の3倍を引いた額です。
Aの所持金がCの所持金よりも200円多いとすると、Bの所持金はいくらですか。
〈解説〉
今回はあえて式のみで考えてみます。※途中単位は省略
Bの所持金を①とします。
Aの所持金→②-200
Cの所持金→①×7-(②-200)×3
=⑦-⑥+600
=①+600
AとCの差が200から
②-200-(①+600)=200
①-800=200
① =1000(円)…(答)
(-)×(-)=(+)
を生かせば、簡単な式の処理でしたね。
最後になぜマイナス×マイナスがプラスになるか考えてみましょう。
色々な説明があると思いますが、小学生が理解しやすいもののひとつに、水そうに水をためる 設定があります。
「1分間に2Lの水を排水する管がついた100L入る水そうがちょうど今空になりました。
30分前には何Lの水が入っていましたか。」
のような問題を考えるとき、普通は
2×30=60(L)
でおしまいにすると思いますが、これを
2L排水→ -2L注水
30分前→ -30分後
と考えれば
(-2)×(-30)=60(L)
となり、見事に
(-)×(-)=(+)
の説明がつきましたね。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の1題文章題
難易度★★☆☆☆
A君は1本50円のボールペンを、B君は1本38円の鉛筆をそれぞれ何本か買いました。
(1)2人が支払った金額の合計は3622円でした。
2人の買った本数の組み合わせはいくつか考えられますが、そのうち差が最小のときの差は何本ですか。
(2)C君は1本120円のマーカーを何本か買いました。
3人を合わせると103本で6644円払いました。
C君は何本買いましたか。
考えられる本数を全て答えてください。
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