VOL.203比を利用しよう(3)
中学受験生なら「仕事算」は誰でも知っているでしょうし、逆に知らなければかなりまずい状況かもしれません。
では「帰一算」は知っていますか?「のべ算」と同じらしいですが。
※「特殊算」は教科書に載っているわけではないので、塾等が子供たちにも分かりやすいようにと命名したものが徐々に浸透し市民権を得たと考えられます。
名前は知らなくても、ほぼ無意識のうちに使っているのがこの「帰一算」だと思います。そのことを説明します。
まず、「仕事算」とはどういったものかと言うと、「ある仕事を終えるまでにかかる時間が異なる複数人が、共同で仕事を終えるのにかかる時間を求める」というのが典型的だと思います。その際「仕事全体を1とおく」のがポイントで、その部分が後述する「帰一算」と異なります。
では「帰一算」はというと、上と同じ問題を「のべの考え方を使って解く」、その解き方を指しているのです。解法を「帰一算」と呼んでいるようです。
何だか良く分からなくなってきましたが、次のようにまとめるのが妥当かと思います。
◎そもそも「特殊算」は「問題」を指しているのか「解法」を指しているのかその「両方」なのかがいまひとつはっきりしない。ここでは一応「両方」とする。
◎「仕事算」系の問題を「仕事算(全体を1とする)」を基にして解くやり方と「帰一算(のべの考え方)」を基にして解くという2つのやり方が存在する。
そして今取り上げている「比を利用する」ことと相性が良いのが「帰一算」です。
「のべの考え方」の具体例を示します。
「ある仕事をするのにAは2時間、Bは3時間かかる」
⇒「1時間あたりの仕事量をA→③、B→②とし全体の仕事量を⑥とおく」
AとBの時間当たりの仕事量の比が3:2ということですね。
一方、「仕事算」はというと、全体の仕事量を「1」と置くわけですから、「割合」の発想ですね。
「ニュートン算」は「仕事算」の一種と言われますが、解法の観点からは完全に「帰一算」です。
もうお判りでしょう。解法としての「仕事算」は「帰一算」に含まれるというか、実戦的には「帰一算」で解くべきケースがほとんどのはずです。
そのことについて問題を解きながら考えてみましょう。
A君1人だと96時間で終わる仕事があります。この仕事をA君とB君の2人でやると、1人でやるときと比べA君は1.6倍、B君は1.4倍の仕事ができるようになり、25時間で終えることができます。
この仕事をB君1人で行うと何時間で終えることができますか。
〈仕事算による解法〉
全体の仕事量を1とすると、A君の1時間当たりの仕事量は1/96。B君と一緒だと1.6倍になるので
1/96×1.6=1/60
A君とB君が一緒にやった時の1時間あたりの仕事量は1/25。A君と一緒の時のB君の仕事量は
1/25-1/60=7/300
B君1人のときの1時間あたりの仕事量は
7/300÷1.4=1/60
よって、求める答は
1÷1/60=60(時間) …(答)
〈帰一算による解法〉
A君の1時間あたりの仕事量を5とする。(以下考え方は上と同じなので式のみを記す)
5×96=480
5×1.6=8 ←ここが整数になるように最初を5にした
480÷25=19.2 ←ここは小数第一位で収まるので良しとした
19.2-8=11.2
11.2÷1.4=8
480÷8=60(時間) …(答)
いかがでしたでしょうか。分数の足し算・引き算は「通分」という問題があるのでどうしても効率が悪くなります。ほぼ整数でいける「帰一算」の方が時間の面でも正解率の面でも優位だと思います。
また、途中で分数になってしまうようなら、最初の設定を変えることが容易という柔軟性も「帰一算」ならではです。
比→数値の設定は自由なので必要に応じて変化させることもあり得る(柔軟)
割合→全体を1(10,100)とするのが出発点であり絶対(硬直)
であるならば、私は「割合」の発想による解法はいらない(あるいは「比」に含まれる)と考えます。
「仕事算」系の問題は極力「帰一算」で解く練習をすることをお勧めします。
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