VOL.186【入試問題を解いての感想2021】 -(1)開成-
入試問題にも流行りがあり、昭和の時代からみれば考えられないほど難化しました。
最難関校では精力的に新傾向の難問を出してきましたが、実はミドル層は最難関校で出題されてから数年後に同じような問題を出すことがあるので、全体的な難易度の底上げが起こってきたのです。
我々指導者は指導内容をより良いものにするため、情報のアップデートを毎年行わなければいけません。特に重要なのは最難関校の最新の入試問題を解くことです。
最難関校の入試問題を解いた経験はそのままミドル層の指導にも生きるのです。しかし、最難関校の対策はそれだけでは足りず、想像力が必要になります(この先は企業秘密です)。
今年も既に何校か問題を解きましたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。
と言うことで、昨年もやった【入試問題を解いての感想】を今年もやります。
【入試問題を解いての感想2021】 の第一回は「開成」です。
例年、「開成」の問題は大注目なのです。その理由は、比較的ブレが大きいからです。
まずは大問が3題か4題か、そして小問集合となっているのかを確認し、思考力系の問題の占める割合をチェックしました。
やはり、同じ傾向が続くことは無く、いくつかの変更点がありました。
注目の大問数は3題でした。そして1は小問集合でした。ただし2018年のような軽い小問ではなく、1問1問がズッシリと重い4題でした。
2は立体図形の問題、3は場合の数の問題と、当ブログで再三言っている「難関分野ツートップ」からの出題でした。
過去2年が思考力重視を打ち出していましたが、今年度はそれほどでもないように感じました。
◎開成
1小問集合
(1)100年後の曜日を求める問題でした。本ブログでは400年以上前の曜日を求める問題を扱っており(VOL.125)、2100年もうるう年であると仮定する技を使えば解説と同じ解法でいけました。別解はシンプルに日数を7で割るものでしたが、大半の受験生はそちらで解いたと思われます。
(2)三角形の各頂点から直線を引き、いくつの領域に分けられるかを求める問題でした。新たな直線を引く際、既に引いてある直線と交わるたびに領域が1つ増え、辺に到達したときにさらに1つ増える、といったイメージを持てていれば正解は容易だったでしょう。
(3)正六角形内に正三角形をつくり、その面積を求める問題でした。基本問題だったので、ほぼ全員が正解したのではないでしょうか。解法は分割の作図をして数えるか、相似比を使って計算するかだったと思いますが、手間は大差ありませんでした。慎重派は両方やって確かめとしたかもしれませんね(GOOD!)。
(4)与えられた分数を小数で表したときの、小数第48位、56位、96位を求める問題でした。当然求める位には意味があるのですが、そのあたりを理論的に突き詰めようとすると「数の性質」の難問となったことでしょう。軽く解こうとすると、仕組みに気付いたとしても「繰り上がり」をうっかりしてしまい不正解になるという罠がありました。この問題を正解したのはモリモリ筆算した受験生だったかもしれません。そうなると、より考えて真相に迫った受験生が罠にかかって失点し、何も考えなかったけれど面倒な計算問題を解き切った受験生が正解するという想定外の事態が起きたかもしれなかったのが少し残念でした。
2立方体の辺上の4点を頂点とする三角すいの体積を求める問題
(1)は完全にウオーミングアップで、ほぼ全員が正解したことでしょう。ただし、頂点の名前がひらがな、カタカナ、アルファベット大文字、アルファベット小文字の4種類だったので、そこは注意が必要でした。
(2)からが本番でした。立方体に内接する正四面体の体積を求める際、内部底面のイメージで解くやり方を修得していれば、本問ではそれを利用することができました。内部底面が正四面体と比較すると6分の5になっているので、体積も6分の5になります。
(3)これも(2)と同じ方針でいけるのですが、内部底面の面積比を求めるのにひと手間かかる設定になっていました。内部底面が正四面体と比較すると12分の7になっているので、体積も12分の7になります。立体図形なので、他にも解法はあるでしょうが、ここに紹介した内部底面を利用するものがおすすめです。
本問が差がつく問題・合否を分ける問題だった可能性が高かったと思います。
31と0が書かれたカードを2人が操作する場合の数の問題
(1)(2)は書かれているルールを確認する問題でした。ここで、しっかりと何が書かれているかを把握する必要があります。書かれていることをそのままやるだけなので、正解率は高かったでしょう。
(3)は(1)(2)を踏まえ、逆算をするわけですが、極端な例なので、間違える可能性は低かったと思います。ここまで解き進めてくると「2進数」になっていることに気が付いた受験生も多数いたことでしょう。
(4)ここからが本番でした。この問題の正体は、2進数同士の足し算で繰り上がりが生じると「スコアスペース」に「0」が入ることです。これと、最後は繰り上がりがないことに気付けば、「スコアスペース」に「1」が入るのは右から4番目か5番目ということがわかるでしょう。
(5)どこで繰り上がりが生じたかで分類すればなんとかなったでしょうが、「場合の数」の確かめのしにくさと最後の問題ということもあり正答率は低かったと思われます。合格者平均点がそれほど高くなかったので、どこまで行っても正解かどうかはっきりしない本問に時間を割くより、1(4)や2をに注力した方が得策だったかもしれません。1点の素が2カ所にあり、それをどこで回収するかなのですが、3カ所と3カ所と考えれば、
3×3=9(通り)
までは比較的簡単に求められます。残りは例外で、「スコアスペース」の右側3つが全て「0」のケース(右端の1点の素を3連続で回収できないケース)です。ここまできたら全てを書き出せば(4通り中3通りが該当)正解率が高かったと思います。
首都圏最難関私学にふさわしく、良く練られた解き応え十分の問題が並んでいました。このような出題が続くならば、受験生としても思う存分「算数の力」を伸ばすことができますね。
本校を志望するならば、「計算力」や「知識」を身につけた上で十分に「思考力」を鍛える必要があります。そして最後の仕上げで「得点力」に磨きをかければ、適切な準備と言えるのではないでしょうか。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の1題割合と比
難易度★★☆☆☆
名門君がアメリカ映画を見ていたら、セリフでは「気温が1℃」といっているのに画面が「33.8℉」となっているのを不思議に思いました。調べてみると温度の表し方には「摂氏(℃)」と「華氏(℉)」の2種類があることを知りました。また「摂氏」の凝固点と沸点との数値の違いが100なのに対し、「華氏」の凝固点と沸点との数値の違いは180ということも知りました。
また、温度は0度よりも低くなると-(マイナス)で表し、-10℃は0℃よりも10℃低い温度ということを知りました。
(1)摂氏と華氏の値が一致するのは何度の時ですか。
(2)ある温度の時、華氏の数字の部分が摂氏の数字の部分の3倍になりました。考えられる温度全てを華氏で答えてください。ただし、数字の部分とは仮に-(マイナス)がついていたとしてもそれを無視したものです。
解答が表示されます