VOL.98【計算名人への道】 -数の感覚

整数問題


ここで「計算」について整理しておきます。

「計算」という言葉は主に二つの意味で使われていると思います。

一つは「計算問題」そのもの。
もう一つは「解法が分かった後に答を出すために行う」という意味での「計算」です。

【計算名人への道】ではこの双方にかかわる力を「計算力」として、その「計算力」を伸ばすために「暗算力」を鍛え、「計算の工夫」を意識しましょうという提案をしました。

また、模試の正答率をみると意外に「計算問題」の正答率が低いことに気づきます。
ですから
「計算問題」=「簡単な問題」
とは言い切れず、それなりに対策をしなければならないことがわかります。

具体的には「計算の工夫」が中心になると思いますが、毎日やる「計算演習」はこちらの対策といえるでしょう。

今回は、どちらにも関係する「数の感覚」について書きたいと思います。

まずはよくある珍解答を紹介します。

①バスの速さ → 時速3km …人が歩くより遅いバスに誰が乗るのだろうか?

②食塩水の濃度 → 200% …部分が全体の2倍とはどういうこと?

③正何角形か → 13 1 3  角形 …理解不能です。

④12×15 → 170 …なぜ17の倍数になるのだろう。

確かに計算の結果が上記のようになってしまうこともあるでしょう。
しかし、少し考えてみれば間違っていることは明白です。
変な答は間違いを修正できるチャンスなので、ラッキーとも言えます。
きっちり修正したいところです。

「珍解答」の問題点は2つです。

  1. そのような答がでてしまう点。
  2. 自分の出した答を振り返ろうとしない(あるいは、間違っていることに気が付かない)点。

例えば上の①の場合、本当は時速40kmだったのを0を落としてしまった、あるいは求めたのは秒速だった、といったことが考えられます。
どちらにせよ計算結果がそのまま「答」となるような式を立て、シンプルに計算することをおすすめします。

また、②の場合も、「0」の個数を間違えていると思われますが、そもそもの計算を
「濃度= 食塩 全体  ×100」
の公式を使って行えばミスの可能性はかなり少なくなると思われます。
それ以前に濃度200%なんて答は絶対にあり得ないので、そんな答は書いてはいけません。

いずれにせよI.を防ぐのに最も有効なのは「計算の工夫」ということになりそうです。
さて、II.の場合、今回のテーマである「数の感覚」の欠如の疑いがあります。

「数の感覚」にも「量的感覚」と「質的感覚」の2種類があり、①②が「量的感覚」、③④が「質的感覚」に関わっていると思われます。

「量的感覚」で大切なのは「概算」と「おおよそのサイズ」です。
「概算」とははおおよその数で計算することです。
<例>39×21=719
これがなぜ間違っているか概算を使って説明すると
39×21 → 40×20=800 …719は小さすぎるので間違っている

もう少し厳密にやるなら
39×21 =39×20+39
=40×20-20+39
=40×20+19 > 40×20 → 正解は819
と間違っていることの確認だけでなく、正解までもっていくこともできます。

ざっくりとした計算は桁数の確認にも使えますね。

「おおよそのサイズ」は「計算」に限らず算数全般で大活躍します。

上記①のようにバスの走行中の速さは時速30~40kmだということと、人の歩く速さは時速5km前後だということを知っていれば、バスの速さが時速3kmという計算結果に違和感を持つはずです。
ただし、絶対に不正解というわけではなく、渋滞にはまったときの平均の速さを求める問題では十分に考えられる値です。

「図形問題」でも「おおよそのサイズ」は重要で、正確な図で鋭角の角度を聞かれているのに100°という計算結果になったとしたら、間違っている可能性が大きいです。

また、②のようにそもそも絶対にあり得ない数字なのにそれを放置してしまうというのはかなり問題の根が深いです。
指導者との緊急ミーティングが必要なレベルだと思います。
ちなみにこのブログのVol.14の今週の1題で出てくる
「溶解度の関係から食塩水の濃度が26.4%を越えることはない 」
というのはおおよそは合っているので、ちょっとだけ頭に入れておくと便利です。
ただしそれを超える濃度では問題を作りにくいというレベルの話で絶対にないというわけではありません。

次いで③の問題点は、「整数」しかありえないのに「分数」で答えてしまっていることにあります。
人数を10.4人と答えたり値段を50.5円と答えたりするのも同質です。
「解が整数」というのはかなり大きなヒントなので、しっかり押さえておかなければなりません。
また、問題によってはたとえ人数であっても答が小数や分数になることもある(例えば平均を聞かれた場合)ので、その判断を間違えないようにしなければなりません。

④が一番大きなテーマとも言える「約数・倍数の感覚」と関係しています。
「約数・倍数」を理解するためには「素数」を知ることが必要なので、「17」という素数に反応できていない受験生は基本から学ぶ必要があるでしょう。

この「質的感覚」に近いものとして「アナログ感覚」があります。

代表例が「時計の文字盤」で、あの文字盤のイメージがあれば「15÷45= 1 3  」と、これといった計算なしで一瞬で解けてしまいます。

そうなると、文章題を解くときに図を描くというのは理にかなったやり方ということになります。

というように、「質的感覚」は「計算」に限ったことでなく、「算数全体」に大きく関係していることがわかります。

ではその「数の感覚」を身に着けるにはどうしたらよいのでしょうか。

◎量的感覚

日常生活には数字があふれています。
それに触れたとき、ほんの少しで良いので、意味を考えてみることをおすすめします。
私は子供の頃、電車の一番前に乗り運転席を見るのが好きでした。
特にスピードメーターと目の前を流れていく景色の関係が好きで、何となくですが、速さの感覚が掴めていました。
また、「野球好き」の受験生は割合を苦にしないことが多いのですが、それは「打率」「勝率」「防御率」などの「割合」に慣れているからと考えられます。
缶ジュースやペットボトル飲料にも容量や果汁が含まれるパーセンテージが書いてあるので、飲む機会があればチラッと見ておきましょう。
とにかく数字に興味を持ち、その意味を考えてみることが大切です。
また、習ったことの根本的な意味の確認も忘れてはいけません。
これがきちんとしていれば食塩水の濃度が200%なんて答は論外ということになるでしょう。

◎質的感覚

特に大切なのは「約数」です。
「23」と「24」はお隣り同士ですが、約数の個数は「2個」と「8個」で、かなり「キャラ」が違います。
このような感覚が掴めれば、④のような計算ミスは即座に修正できるはずです。
また、「素数」はある程度頭の中に入れておく必要があります。
当ブログでもVol.68で取り上げたので、参考にしてください。
また、答が整数なのかそうでないのかは非常に重要です。
当たり前のことなので、軽視してしまいがちですが、大学受験まで関係する重要なテーマです。

以上色々と書きましたが、本人のやってみようという気持ちが一番大切なので、日頃からモチベーションを保つことに注意を払ってください。

最後にまとめます。

  • 「計算名人」に近づくためには「暗算力」・「計算の工夫」に続き「数の感覚」を身に着ける必要がある。
  • 「数の感覚」は「量的感覚」と「質的感覚」に分類でき、それぞれ、「計算結果」の確認の役に立つ。
  • 「数の感覚」は日々のチョットした心がけで身に着けることが可能だが、本人がその意識を保つ必要がある。

実はこの「数の感覚」の有無がそのまま算数の成績として現れる傾向があります。
近年多くの中学で重要視されている「思考力」との関係も強いので、これを機会に「数の感覚」の強化をしていただければと思います。

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今週の1題整数問題

難易度★★★★☆

1~99までの整数に対し、以下の操作を行い、別の数字をつくります。
整数Aに対しこの操作を行うことを[A]とあらわすことにします。

<操作>
[A]はまず  A  という分数をつくる。ただし、BはAの約数の個数とする。
分数  A  を約分できるだけ約分したものを[A]とする。 A  は整数になることもある。

(1)1~99までのすべての整数にこの操作を行うと、分子が1となるものはいくつありますか。
ただし整数となるものはのぞきます。

(2)整数Bに対し、[B]は  Q  という分数になりました。
[B]+[C]+[D]+[E]+[F]+[G]=1
となり、[C]、[D]、[E]、[F]、[G]の分母が全てQの約数となるようなC、D、E、F、Gが存在するとき、Bとして考えられるものを全て求めてください。

クリックすると
解答が表示されます
<答>(1)14個 (2)33、35、66、70、99
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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