VOL.60場合の数(2)
先日TVで野球を観ていたら解説者がとても参考になることを話していました。
解説者はピッチャーだったのですが、現役時代の登板直前の気持ちの持ち方を教えてくれました。
「緊張」「自信」「リラックス」、これらをバランス良く持って試合に臨めば力を発揮できるということでした。
これは受験にもそのまま当てはまると思います。
「緊張」というのは「上がる」とか「固くなる」というよりも「気を引き締める」というふうにとらえれば良いと思います。
「自信」は算数の問題を解く際の動力源のようなものです。
「リラックス」は「力を抜く」「楽しむ」とも言い換えられると思いますが、集中力や瞬発力を発揮しやすくなります。
今後、模試などで、3つの気持ちのバランスに気を配ってみてはいかがでしょうか。
本番で活かせると思います。
今回は以前登場していただいたDさんの娘さんのGさんに来ていただきました。
金田Gさんはお母さんにそっくりですね。よろしくお願いします。
Gさんよろしくお願いします。この間はありがとうございました。
私は以前より「立体図形」ができるようになりました。
今日は別の分野もできるようになって帰りたいと思います。
金田ほう、別の分野ですか。
Gさんはい。実は「場合の数」が苦手なんです。
金田どういうところが苦手なのか、もう少し詳しく話してもらえますか。
Gさん基本問題はできるのですが、応用問題が解けません。
どうやって解いたらよいか見当がつかないことが多いです。
あと、書き出しの時のミスが多いです。
金田私は「順列」と「組み合わせ」をきちんと区別できていれれば基本は大体大丈夫と判断しますが、そこはできていますか。
Gさん横一列にならんで写真を撮るのが順列で、掃除当番を選ぶのが組み合わせですよね。
金田そうです。そうやって具体的な例とともに頭に入れておくのはとても良いことです。
他にも「和の法則」と「積の法則」の区別も大切ですが、そちらは大丈夫ですか。
Gさん場合分けをしたときは和の法則、おのおのにつき同じようにあるときは積の法則です。
これは先生のブログ(VOL.10)で読みました。
金田おお、そうですか。ブログを読んでくれているのは嬉しいですね。
基本はしっかりしているようなので、応用問題の対策を考えていきましょう。
Gさんができなくなってしまう応用問題とは次のようなものでしょうか。
(1) 名門君と父、母、妹、弟の5人が横一列になって写真を撮ることにしました。父と母がとなり合わないような並び方は何通りありますか。
(2) 男子3人、女子3人の中から掃除当番を選びます。掃除当番5人のうち2人はぞうきん、3人はほうきを担当します。ほうきは少なくとも一人は男子が担当するならば、掃除当番の決め方は何通りありますか。
Gさんはい、(1)はなんとなくできそうな気もしますが、(2)はどうやって解けばよいか
全然わかりません。
金田実は(1)と(2)に共通する基本的な考え方というものがあります。
それは「余事象を利用する」というものです。
余事象についてはVOL.4の解答の解説にある「~参考~」の部分を参照してください。
要は直接求めるのではなく、そうならない方を求めて全体から引く、というやり方です。(1)は父と母がとなり合う場合を求めて全体から引き、(2)はほうき担当が全員女子の場合を全体から引けば答がでます。
Gさんなるほど、確かにそのように考えれば答が出そうです。
金田ここで学んで欲しいのは個々の問題の解き方がどうというよりも、基本の範囲を「余事象
の利用」まで広げておく、ということです。
ということで、答を出してみましょうか。
―――ここで、Gさんは問題を解き始め、5分ほどで2問とも正解した。
(答) (1)72通り (2)57通り
金田素晴らしい。ヒントがあれば正解できるということはもともと力があったということで
す。
「場合の数」が苦手というのは思い込みに過ぎないかもしれませんよ。
Gさんヒントを出してもらえれば解けるのですが、なかなか自分では思いつかないんです。
金田「場合の数」はまず「引き出し」の数を多くしておくのがポイントです。
他の分野よりも少しだけ細かく解法を頭に入れておきましょう。
「引き出し」が多ければ、見たことがない問題でも「似た問題」の範囲内という可能性が高まります。
「似た問題」であるならば解法を少しアレンジすれば解けるということも多いです。
解法がある程度頭に入ったら、まとまった量の問題を解きます。
できればほんの少し違う問題をセットにして解きたいですね。
その際大切なのは正解に至るまでの考え方です。
問題が少し違ったときに考え方がどのように変化するかをしっかり学んでください。
仕上げはテストなどで実際にチャレンジすることです。
未知なものに対して立ち向かっていくのは勇気がいることですが、何回も挑むことで逞しさが身についてきます。
ここで正解すれば大きな自信につながるでしょう。
それと、「場合の数」ではもうひとつ重要なテーマがあります。それは「書き出し」です。
Gさん私は「書き出し」が苦手です。
金田私は個人的に「苦手」というのは自らが作り上げた「幻影」のようなものだと思っていま
す。
「苦手」という言葉を口にしなければ自然となくなるものです。
Gさんもこれからは「苦手」という言葉は口にしないようにしましょう。
Gさんわかりました。これからは「苦手」なんて言いません。
金田代わりといっては何ですが、おすすめの言葉は「簡単」です。
わかってしまえばそれはもう「簡単」ということです。
最初は強がりでも何でも良いので「簡単」と口にしてみてください。
不思議と解ける範囲が広くなりますよ。
Gさんはい、「簡単」「簡単」!
金田その調子です。その勢いで「書き出し」を攻略しましょう。
入試においては「書き出し」が基本といえるかもしれません。計算であっさり解けるような問題は出題されないか差がつかないかのどちらかなので、入試における重要度は下がると考えられるからです。
書き出した場合、その先のルートがふたつ考えられます。
① 最後まで書き出し
② 途中から計算(あるいは工夫)に移行
できれば②で解きたいのですが、計算による解法が見えなければ①で押していくことになります。実際100個位ならば躊躇せずに書き出したほうが下手に考えるよりもはやく答が出るかもしれません。
素早く正確に書き出せるように普段から練習しておきましょう。
ここでGさんに質問します。Gさんに書き出しのミスが多い原因は何だと思いますか。
Gさんひとつ抜けてしまったり、ダブって書いてしまうことが多いような気がします。
金田もう一歩踏み込んで、なぜ抜けたりダブったりするのか、その原因がわかれば解決の目途が立ちます。
まず、極力「樹形図」を利用することをおすすめします。
それと小さいものから順番に書いていくということを徹底してください。
Gさん確かに「樹形図」はあまり使っていませんでしたし、数の大きさについては結構いい加減にやっていました。
これからは気を付けたいと思います。
金田そうですね、普段からこれらに気を配っていれば正解率は上がっていきますよ。
Gさんはい、頑張りたいと思います。
<ポイント>
- 「順列」と「組み合わせ」、「和の法則」と「積の法則」の区別がつくように。
- 応用問題に対応できるようにするには解法の「引き出し」を増やし、それを使いこなす練習をする。
- 書き出しは「樹形図」が基本。数の大小には気を配ること。
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今週の1題場合の数(2)
場合の数の問題は
VOL.4、VOL.10、VOL.20、VOL.32、VOL.33
にもあります。
難易度★★★★★
名門君は所属の野球のチームでピッチャーをやっていて、「背番号」は「1」です。
野球は1チーム9人で行います。
一人ずつ順番に打席に立ってピッチャーの投げたボールを打つのですが、この打席に入る順番を「打順」といい、1番から9番まであります。
また、「背番号」も選手の守備位置をあらわすことがあり、名門君のチームもレギュラー9人は1番~9番までの背番号を付けています。
目白君は「背番号」は「10」ですが、打つのは得意です。
(1) 名門君のチームのレギュラー9人で「打順」を組みます。
9人のうち4人が「打順」と「背番号」の数字が同じになるような「打順」は何通りありますか。
(2)ある試合でピッチャーが打席に入らない「指名打者制」をとることになりました。
名門君は打席に入らず、代わりに目白君が打席に立つとすると、9人のうち4人が「打順」と「背番号」の数字が同じになるような「打順」は何通りありますか。
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