VOL.3271問全力解析 2024年度 栄光学園中学校
今回の1問全力解析は2024年栄光学園2です。
まずは問題を見てください。
基本テーマ
①問題文の把握
②速さのイメージ
③別のものに置き換える
④分数の扱い
⑤分かっているものと分かっていないものを明確にする
この問題では以上のような基本テーマが潜んでいると考えられます。ひとつずつ見ていきます。
①問題文の把握
1回読んだだけでは全てを飲み込むのが厳しい問題だったと思います。
そのような場合は,しっかりと手を動かしながら,何を言っているのかを把握する必要があります。
本問ではそこで何を書けば良いのかというところが悩ましかったかもしれません。
②速さのイメージ
水そうの水が増えたり減ったりするタイプの問題ですが,「速さ」の問題のイメージで捉えれば分かりやすかったように思います。
「速さ」の問題はアプローチの方向がいくつか考えられ,その選択によって正解する確率が変わってくると思われます。
このあたりの事情はVOL.117に書いたので参考にしてください。
③別のものに置き換える
何を描くのが良さそうなのかという話です。
線分図でも,メモのようなものでも良いのですが,「速さ」が変化することを視覚化するためには「グラフ」を描くことが必然と思われます。
絶対に必要という訳ではないですが,今回はグラフを描いてみたいと思います。
④分数の扱い
本問の場合,「速さ」を分速で求めると分数が出てきます。
分数は足し算・引き算の場合は帯分数が良く,掛け算・割り算の場合は仮分数が良いというのは常識ですね。
メモのような形で置いておく際,帯分数と仮分数を併記しておくと,その後の計算の際便利だと思います。
また,実際に計算する時は選択を間違えないようにしましょう。
⑤分かっているものと分かっていないものを明確にする
本問はまず「AとCを同時に開いた時の時間あたりの排水量」が求まり,次いで「Bの時間あたりの給水量」が求まります(ここまでが(1))。
それを利用し「AとBとCを同時に開いた時の時間あたりの排水量」を求め,(2)を計算します。
(3)では「BとDを同時に開いた時の時間あたりの排水量」が求まるので「Dの時間あたりの排水量」がわかり,「AとCとDを同時に開いた時の時間あたりの排水量」もわかる,という流れができます。
(4)は水位が変わらない状態をイメージできれば自ずと範囲が決まるでしょう。
「AとBを同時に開いた時の時間あたりの給水量=Dの時間あたりの排水量」…これより多い
「Aの時間あたりの給水量=Dの時間あたりの排水量」…これ以下順次わかったものはメモしておき,次は何を求めれば良いかを意識しながら解き進めましょう。
以上を踏まえて問題を解いてみましょう。
(1)『初めの状態』からA,Cを同時に開けるとBが開くので,水量が60Lから20Lになるのに7分30秒かかったということです。
さらにその7分30秒後に水量は0Lになりました。
その様子をグラフに描きます。以下縦軸が水量,横軸が時間のグラフです。
〈グラフ1〉
AとCを同時に開いた時の1分あたりの排水量は
(60-20)÷7.5= 16 3 =5 1 3 (L/分)
ABCを同時に開いた時の1分あたりの排水量は
20÷7.5= 8 3 =2 2 3 (L/分)
よって Bの1分あたりの給水量は
5 1 3 -2 2 3 =2 2 3 (L/分)
(答)2 2 3 L
(2)ABCを同時に開いた場合,空になるまで開閉の変化はありません。よって
60÷ 8 3 =22.5(分)=22(分)30(秒)
(答)22分30秒後
参考までにグラフを載せておきます。
〈グラフ2〉
(3)今度はBDを開けた時の情報を使います。
先にDが閉じるので,40Lに減ってDが閉じその後最初から15分で70Lになったことがわかります。
グラフは次のようになります。
〈グラフ3〉
Bが30Lためるのにかかる時間は
30÷ 8 3 =11 1 4 (分)
なので,BとDを開いて40Lになったのは
15-11 1 4 = 15 4 (分後)
です。よってB+Dの1分当たりの排水量は
20÷ 15 4 =5 1 3 (L/分)
よってDの1分当たりの排水量は
5 1 3 +2 2 3 =8(L/分)
と求まります。
A,C,Dを同時に開くとまず
5 1 3 +8=13 1 3 = 40 3 (L/分)
の速さで排水され40Lまで減ります。40LになるとDが閉じるので 16 3 (L/分)の速さで20Lまで減り,そこでBが開くので 8 3 (L/分)の速さで減って水そうが空になります。グラフは以下になります。
〈グラフ4〉
20÷ 40 3 +20÷ 16 3 +20÷ 8 3 =12 3 4 (分)=12(分)45(秒) ・・・(答)
(4)AとBを開いたあと70LになりBが閉じ,その後80LでDが開いて水位が変わらない様子をイメージします。Aの給水量はDの排水量以下であることがわかります。
よって8L/分以下です。
グラフは以下になります。
〈グラフ5〉
装置②が壊れるとBが閉じないのでA+Bの給水量はDの排水量より多いことが分かります。グラフは以下。
〈グラフ6〉
8-2 2 3 =5 1 3 (L/分)
より多いので
(答)5 1 3 Lより多く8L以下
いかがでしたでしょうか。
丁寧に解いていけば,何とかなることがわかったと思います。
やはり試験本番では落ち着きが肝心ですね。
ただし,あまりゆっくりしていると時間が足りなくなるので,基本的なスピードは十分に上げておく必要があるでしょう。
今年も楽しい問題を提供していただき,ありがとうございました。
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