VOL.307中学入試直前期の過去問演習
学習の過程の分類からです。
①単元別学習
②総合学習
③発展学習
④過去問演習
今回は④について書きます。
過去問演習については何度も書いてきたので、リンク先を貼っておきます。VOL.286
今回は過去問演習によって何が得られるかに絞って書きたいと思います。
まず、一番大きいと思われるのが、「予行演習」としての効果です。
人間は慣れが肝心です。
慣れていないと能力を発揮しにくくなります。
慣れるには過去問が一番と言えましょう。
そうすると、何年分やるべきかという問題の答が見えてきます。
答は「本人が慣れるまで」となるでしょう。
より正確に言えば「本人が慣れたと思えるようになるまで」でしょうか。
結局この効果は精神的な安定が大切なので、本人の気持ち次第と言えるでしょう。
次に、過去問演習によって、その学校の
①「出題傾向」
②「出題形式」
③「難易度」
などを知ることができる、という効果があります。
①「出題傾向」は、主にどのような分野の出題がされるのか、といったようなことです。
②「出題形式」は、試験時間・問題数や解答の方法(途中式が必要かどうか等)がどうなっているか、です。
③「難易度」はどれ位の知識・力が要求されているか、です。
①は今後重要になってくるのですが、本番が近づけば近づくほど、出題可能性が高い分野を優先して学習することが、合格の確率を上げる手段となります。
本人もさることながら、指導者にとって超重要です。
何年か前に開成志望の受験生を担当したことがありました。
潜在能力は高かったのですが、全く仕上がっておらず、苦戦が予想されました。
そこで、授業では思い切って分野を絞りました。
「速さ」「立体図形」「場合の数」に注力したところ、本番もその3つの分野が出題され(大問4問中)見事合格となりました。
過去問を分析して出題分野を予想し、それが上手く行った例です。
実はその数年前にも同じ様に上手く行った例があり、自信はありました。
正直に言えばあまり読めない年もあり、予想も必ず当たる訳ではありません。
時間が無く、やむを得ずヤマを張ったわけですが、過去問をしっかり分析すれば、確率は上がります。
②は学校によって千差万別です。
特に試験時間は重要で、試験における戦略がガラっと変わってきます。
例えば筑駒は試験時間が60分でも良いと思うのですが、実際は40分です。
そうなるとじっくり考えて最もエレガントな解き方を採るなんてことはできず、躊躇なく書き出してガムシャラに答に辿り着くのが基本的な方針となります。
そうなると普段の学習もそちらを優先することになるので、方針が根本的に変わってくるのです。
また、途中式を書く必要があるかどうかも影響が大きいです。
答だけを書けば良い学校の場合、いわゆる裏ワザの様なものは使えるだけ使うべきだと思います。
例えば「ハップス・ギュルダンの定理」「体積比の7倍」「レンズ型の0.57倍」等色々あります。
その反対に、途中式を書く学校の場合は「普段から式を書く」「説明が出来るようにしておく」「部分点狙い」等の練習をしておく必要があります。
③は普段の学習の深さに関係してきます。
出題される可能性がほぼ無いような難しい問題をやっても時間の無駄かもしれません。
逆に全く歯が立たない場合は志望校の変更もありえます。
算数だけでアウトになる可能性が高いからです。
数はすくないですが、過去に過去問演習の結果があまりにも芳しくないので受験校を変更したことがあります。
難易度もそうですが、相性もあり、どうしても点数が取れないということはたまにあります。
その場合は意地を張らずに点数が取れる学校を受験するのが賢明かもしれません。
過去に受験校を変更した生徒さんは、ほぼ全員結果的に成功となりました。
最後に、指導者にとって重要な効果である「合否判定」について書きます。
例えば6年8月の時点で過去問を解いた際、合格者平均点よりも上であるならば、その学校は「押さえ」にしても良い位だとおもいます。
普通、第一志望ならば11月の時点でも受験者平均位であることが多いでしょう。
やや足りないのは良いとして、私が重視しているのは「前と比べてどうか」ということです。
少しずつ伸びているか変わらないということが多いですが、大きく伸びたり、逆に下がったりする場合もあります。
その時の対応で、かなり差が生じると思います。
現状を打開するには何か変化が必要かもしれませんから、その時には大きな決断が必要です。
このあたりの匙加減が、合否に大きく影響してくると思われます。
その辺りのことは受験全体の中でも特に神経を使う部分です。
結果的にうまくいったやり方をなるべく採用するようにしていますが、結果は上々です。
今回は過去問演習の効果について改めて考えてみました。
受験生本人もさることながら、我々指導者にとっても過去問演習は大切なのだと再認識させられました。
過去問を解くのが趣味みたいなものなので本当に良かったです。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。