VOL.305中学入試 直前期の総合学習

受験お役立ち情報


前回、算数の学習の過程を4つに分類しました。
①単元別学習
②総合学習
③発展学習
④過去問演習
これらは試験本番で合格点を取るために築き上げるべきものでしょう。
特に①がしっかりしていないとその後の積み上げの②~④が上手くいくはずがありません。
そういった意味で前回はまず①を取り上げました。

今回は②を取り上げたいと思います。
①は個々は点のようなものなのですが、それに比べ②は広さがあり、③は深さがあるようなイメージで捉えていただけると分かりやすいと思います。
1つ1つの解法をしっかり身につけた後、範囲がなくなった時にどのように対応したら良いかというのが②の主要なテーマだと思います。
②は広さをどうするかと言い換えることができるでしょう。

単元別学習では、「つるかめ算」がその時のテーマならば、まずは「つるかめ算」がどういう問題かが示され、それに対する解法を習います。
続いて「つるかめ算」の解法を使って解ける問題が出され、それを解くことによって解法を自分の物にするという流れになります。

問題にはいくつかのパターンがあり、それらを一通り終えればその単元は終わりとなり、次の単元へ進む、ということになります。
塾によっては数個の単元を終えた所で総合回(その数個の単元の範囲全部)を設けるところもあります。
ただ、この総合回はそれまでの復習という意味合いが強いでしょう。

ここでの総合学習は、算数全体の学習が一通り終わった後、特に単元の指定がない状態で問題に取り組むことを指します。
夏休み後の模試のようなイメージです。
先ほど「つるかめ算」が出ましたから、少し具体的な問題で考えてみましょう。
〈例題1〉
ある車は時速40kmならばガソリン1Lあたり25km走ります。
また時速80kmならばガソリン1Lあたり16km走ります。
ある時、この車でA地点からB地点まで走りました。
最初は時速40km、途中から時速80kmで走った(他の速度では走らなかったものとします)ところ、8時間で28.1Lのガソリンを消費しました。
A地点からB地点までは何kmありますか。

(解説)
1時間当たりのガソリンの消費量を計算すると
時速40km⇒1×  40  25  =1.6(L)
時速80km⇒1×  80  16  =5(L)
つるかめ算の解法を使って
(5×8-28.1)÷(5-1.6)=3.5(時間)←時速40kmで走った時間
40×3.5+80×(8-3.5)=500(km)…(答)

〈別解1〉※本問では数値が良くないのでお勧めできませんが、数値によっては有力です。
平均すると1時間あたり  281  80  L消費しています。
1.6Lと5Lのそれぞれと差を取ると  153  80  Lと  119  80  Lです。
153:119=9:7
これの逆比7:9が時速40kmと時速80kmで走った時間の比なので
40×8×  7  7+9  +80×8×  9  16  =500(km)…(答)

次回書く予定の③の発展学習にかかっているような所もありますが、解くという観点から言えばこの問題は「つるかめ算」の範疇と言えます。
また、「平均」の考え方でも解けるので「平均」の問題と言えるかもしれません。
ただし、「速さ」の理解無しには解けないとも言えるので、「速さ」の問題、また燃費が関係していますから「割合・比」の問題とみることもできましょう。

いずれにせよ「単元学習」が済んだ後は、このような複数の単元に跨るような問題は大いに考えられます。
そして、様々な要素が入り込むことによって、解法としての「つるかめ算」が見えにくくなっている可能性があります。
全体の中からこの問題に適した解法を探し出す必要があるので、単元別学習と比べハードルが上がっていると考えられます。

ここで、どういった場合に「つるかめ算」で解けるというところに到達しないかを考えてみます。
「速さ」や「割合・比」と捉えたために「つるかめ算」とつながらないという受験生は一定数いると思います。
残念ながら「修業が足りない」のかもしれません。

実はこの問題は他にも解法があり、特に「つるかめ算」にこだわらなくても良いとは思うのですが、他の解法の方が思いつきにくい上に、数値が悪いので計算が煩雑になります。
上の「平均」の考え方による解法は計算が煩雑なものの例です。
問題が複雑になると解法も色々と考えられその分広くなり、「つるかめ算」とつながりにくくなるでしょう。

※他の解法は最後に紹介したいと思います。
「速さつるかめ」をやったことがあれば、何となく「つるかめ算」で解けると思うのが普通だと思います。
ところが普通の「速さつるかめ」は時間と道のりが与えられていることが多いです。
それに対してこの問題は道のりが答です。
何が違うかというとガソリンの消費量がヒントとして与えられています。
そこで最初の解法のようにひと手間必要ということになるのです。

ほんのひと手間なのですが、これが入るだけでわからなくなる人も多いでしょう。
これを広さととれば②、深さととれば③に分類されるということなのでしょう。
どちらにせよパターン暗記型の学習では対応できない可能性が高いです。
学んだことを「使える」レベルまで昇華させておく必要があるでしょう。

よって、明快な「つるかめ算」がしっかりしていないと、この問題を「つるかめ算」で解くことは難しいです。
前回書いた①の反復練習がこういったところで活きてくる訳です。

最後に「検索」について書きます。
広い範囲から解法を探すときのイメージは、タンスの中身を物色するようなものでしょうか。
そうするとどこに何が入っているかがきちんとわかっていないと大変ということになります。
ですから記憶する際にどこに何がはいっているのかがわかるような覚え方が有効となります。

ここで前回①の時に少し触れた「問題の並び」と関連してきます。
サラッと「単元別」と書いたのですが、実はかなり重要です。
1冊の本になっていてそれが単元別になっていると記憶の助けになるのです。
検索するとき(思い出そうとするとき)「問題集何ページの上から5行目あたりにあった」というような思い出し方ができるわけです。

一旦頭の中に問題集1冊分が入れば、住所が決まったような状態になる効果が期待できます。
新たな解法を記憶したとしても、適切な位置に収まるようになるでしょう。
では、大手塾の教材はというと… 
私は基本書としてはあまり使っていません。

以上、範囲がない状態に対応するためには単元別学習をしっかりさせることが重要であることが確認できました。
急がば回れではないですが、総合学習で躓いてしまう場合は単元別学習の見直しが効果的である可能性が高いと思います。

〈別解2〉
時速40km,時速80kmそれぞれでガソリン28.1Lで何時間走行できるか計算します。
25×28.1=702.5(km)
702.5÷40=17.5625(時間)…時速40km
16×28.1=449.6(km)
449.6÷80=5.62(時間)…時速80km
8時間との差の比は
(17.5625-8):(8-5.62)=9.5625:2.38=450:112
これの逆比は112:450…28.1Lの時速40kmと時速80km使用の比
よって
28.1÷(112+450)×112×25+28.1÷(112+450)×450×16=500(km)…(答)

〈別解3〉
時速40km,時速80kmそれぞれで8時間走行でガソリン何L消費するか計算します。
40×8÷25=12.8(L)…時速40km
80×8÷16=40(L)…時速80km
28.1Lとの差の比は
(28.1-12.8):(40-28.1)=15.3:11.9=9:7
これの逆比は7:9…8時間のうちの時速40kmと時速80kmの比
よって
40×8÷(7+9)×7+80×8÷(7+9)×9=500(km)…(答)

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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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