VOL.300なぜ、教えない事も重要なのか?

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「教えない」とか「授業をしない」という塾が存在するようです。

私は個別指導ですから「授業をしない」というわけにはいきません。
ただ、「教えない」という部分に関しては、合格のカギとなる可能性があると感じています。

今回はそのあたりのことについて考えてみたいと思います。
誤解を招く恐れがあるので、出来れば最後までお読みください。
よろしくお願いいたします。

まず、教えない塾の中で、成績や合格は一切考慮しないというところも有ります。
根本から違うところなので、今回は考えないことにします。

逆に、教えないのに抜群の合格実績のところもあります。
授業をしない予備校なんていうのもあって、教えないことがプラスに働いている可能性があるように思います。

ここで模試の正答率についてみてみましょう。
模試で正答率が最も高い問題は、〇〇算の基本的な問題のように思います。
例えば普通の「つるかめ算」ですね。

で、先日私の感触よりはるかに低い正答率の問題に出くわしました。
「円すいにひもを渡す問題」で、最短距離で仕切った時の側面の片側の面積を求める問題だったと思います。

ここで1つの仮定をしてみましょう。
・正答率の高い問題は「教えればできるようになる問題」
・低い問題は「教えてもなかなかできるようにはならない問題」
実は、このように考えるとほぼ全てのことが納得できるのです。

例えばよくある現象として、「同じ問題を何回教えてもできるようにならない」というのがあるのですが、元々教えてもできるようにならない問題ならば、納得となります。

また、「基本問題」はできるのに、「応用問題」になるとまるっきりできないというのも、ある程度正答率が低くなるような問題ならば、「教えてもなかなかできるようにはならない問題」なので、出来ないのが普通ということになります。

質問対応をメインにした授業ではなかなか結果が出ないことも当然でしょう。
もう少し分析してみましょう。

単純な「つるかめ算」はなぜ誰もができるかと言うと、解法が分かりやすいからだと考えられます。
これが「差集め算」となると正答率下がってしまいます。
さらに言えば、とりあえずは不必要な面積図による解法まで用意してありますから至れり尽くせりでしょう。

習いさえすれば単純な「つるかめ算」は誰もが解けるようになることは納得です。
では上の「円すいにひもを渡す問題」はどうでしょうか。
正解するのに必要な基礎知識等を列挙します。
・三角形・おうぎ形の面積の公式
・ひもを渡す問題は展開図上で考える→最短距離は直線で結んだもの
・円すいの展開図側面のおうぎ形の中心角を求める公式あり(360°×底面の半径÷母線)
・30°60°の直角三角形の斜辺と一番短い辺の比は2:1
・(根本的なところで)計算力・作図力

ここまできて、教えてもできるようにならない原因が、何となく見えてきました。
①色々な要素が入ってくるとそれらが全部できて初めて正解できるので、ちょっとした知識の抜けも許されないことが原因となり、できるようにならない。
②一つ一つの知識は頭に入っているが、ちょっとした違いの処理や、組み合わせたり発展させたりといったことに関しては、教わったとしても自分ではできるようにならない。

原因が①ならば、間違い直しや、基本の繰り返しで知識を定着させれば解決することでしょう。
ところが②の場合は、知識が完璧だったとしてもできないわけですから、かなり困っているかもしれません。

そもそもの前提が間違っていて、「応用問題は時間をかけてじっくり教えればいつかはできるようになる」だったらまだ良いのかもしれませんが…
何が真実かは私は分かりませんし、個人差もあると思いますが、どちらかと言うと、「教えてもあまりできるようにならない」と感じています。
そしてその主な原因が②だと思っています。

そして、この時に大切なのが「教えない」という姿勢だと思うのです。
なぜ「教えない」が大切か説明します。

算数ができるようになる瞬間について、私は「殻を破った時」がそうなんだと感じています。
具体的に言うと今まで出来なかった問題を自力で解決したような瞬間です。
するとこのように考えることができます。

もう少しでできそうなところで悩んでいる受験生に、親切な指導者が丁寧に解法を教えてあげること、これが最悪かもしれない!

自力で解決できれば殻を破れたものを、その芽を摘んでしまったのだから…
「教えない」ことは、自力で殻を破って欲しいという親心なのかもしれません。

私の授業のつくり方をお話しします。
実は私はなるべく多く教えるように心がけています。
これは基本の知識の範囲を広げそれをもれなく伝えることを重視しているからです。
そして考える時は徹底的に考えてもらいます。
この時は「教えない」です。
正解できればそれで良いのですが、問題は正解できなかった時です。

この時はその問題固有の解法よりも、ベースとなる基本的な考え方を重視します。
そして、それらの理解が十分と感じられたなら、次こそは正解できるようにとの願いを込めて組み立て方等をサラッと「教え」ます。
「次は自力で正解してね!」

普段から挑戦できる機会を多くして、正解することによるレベルアップを狙います。
学習の2本の柱は基本事項を繰り返して定着させることと、それらを使いこなすための演習の質を高めること。
前者を宿題にし、後者を授業中に行うことが多いです。

授業はチャレンジの連続です。
そして正解してレベルアップを繰り返します。
不正解でもすぐ次のチャンスが来ます。
細かいことは気にせず、前向きに取り組み、力をつけることを目標にした授業です。
私がカギを握っているのはどこまで「教える」のかとそのタイミングであり、その加減によって結果が大きく変わってくるように思うのです。

最終的にできるようになるかどうかは本人にかかっています。
我々指導者はそこに寄り添い、支えてあげる事しかできないのです。
それをわかった上で、志望校との距離を計りながら、「教える」ことの出し入れを行っています。

結果を重視して何年も真剣に取り組んできた結果、このようなスタイルになっています。
結果から判断するに、かなり本質に迫れていると自負しております。

さて、最後に少し恐ろしいことを書きます。
「教えればできるようになる」というスタンスでこれから本番までを過ごすとどうなるかです。

塾等では今後扱うのは応用問題がメインとなります。
それをきっちりと教わるとそれなりの時間がかかるでしょう。
量も多いことから時間が不足すると考えられます。
すると、それしかできないような状態に陥ってしまい精神的にもキツくなっていきます。
そして相変わらず「教わってもできない」状態が続きます。

もちろん、努力した分の見返りは期待できますから、前進はするでしょうし、一定数できるようになる受験生もいるでしょうから、塾のトータルでは成果はあがるのでしょう。

ただ、効率が悪いのは間違いないでしょうし、できない側にまわってしまっていたら…
直前期こそ我々の手腕が活かせることが再認識できました。
「教えない」ことの重要性もはっきりと見えました。
今後の授業にご期待ください。

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難易度★★☆☆☆

(1)  767+N  72  を約分して既約分数にしたところ分子が15の倍数になりました。整数Nの最小値を求めてください。

(2)  (767+P)×(85+Q)  648   を約分して既約分数にしたところ分子が3の倍数になりました。PとQがともに自然数のときP+Qの1番小さい値と2番目に小さい値を求めてください。

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<答>(1)43 (2)1番小さい値 21 2番目に小さい値 30
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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