VOL.299問題を解く時の正しい思考回路の作り方
今回は本質的なお話をしようと思います。
問題を解く際、「どういった思考の過程を経るのが望ましいか」について、私の思うところを書きます。
例えば計算問題なら、ただ計算するだけですから、誰でもやればできます。
とは言え、計算の工夫の余地がありますから、少し複雑な問題なら受験生によって様々な解き方(計算方法)となるでしょう。
計算問題に関しては答を出せない訳ではないのですが、様々な選択肢があり、その選択によって正解率とかかる時間に差が生じます。
計算問題での考え方は
・計算の工夫の余地があるかないか
・あるならどのように工夫するか
・正解率が高いものを選択する→通常その選択は時間の短縮にもなる
といったことを絶えず意識することが肝心でしょう。
上の内容は計算問題に限らず、計算する際はいつも心掛けておきたいですね。
続いて計算問題以外の問題についても見ていきます。
まずは1行題から。
1行題は序盤(1番や2番)で出題されることが多く、出来れば鮮やかに解き、勢いをつけたいところですよね。
ですから、1行題で最も大切なことは、パターンでいけるかどうかの判断ということになります。
〈例題1〉正方形143個を11✕13に並べ長方形を作りました。
この長方形に対角線を1本引くと、何個の正方形を通りますか。
(答)23個
上の問題はパターンでいける問題です。
「知ってるよ」で片付けることが可能です。
〈公式〉
A✕Bの長方形で対角線が通る正方形の個数(ただしAとBは互いに素)
(A−1)+(B−1)+1(個)
公式を使えば即答ですし、この公式は頭に入れておかなければいけません。
因みに塾等では
A+B−1(個)
で教えていることが多いと思いますが、立体への応用を考えれば、上の式が勝ると考えています。
〈例題2〉三角形ABCは角Cが直角でAC=22cm、BC=26cmです。
三角形ABCの内部に1辺が1cmの正方形を最大で何個並べることができますか。
(答)263個
〈例題1〉の応用問題です。
応用のポイントは2つ。
・互いに素ではない。
・対角線が通らない方の半分を使う。
22と26は互いに素ではありませんが、2で割れば11と13になります。
ですから、22✕26の長方形の対角線が通る正方形は23✕2=46(個)です。
※互いに素でなくても良い公式があります。
A+B−(AとBの最大公約数)(個)
→22+26−2=46(個)
通らないのは
22✕26−46=526(個)
答はこれの半分なので
526÷2=263(個)
と求めることができました。
今回のテーマは上の解法で解けるかどうかではなく、自分がどこまで事前に準備しているかを正しく認識しておくことが大切、ということです。
〈例題1〉は「知っている」にしておかなければいけません。
〈例題2〉の応用ポイントのうち「互いに素ではない」も「知っている」が必須です。
「通らない方の半分」は志望校や学習の進み具合によっては使えなくても仕方ないと思います。
この場合大切なのは「自分の知っているパターンだけではうまくいかない」と認識することです。
その認識の上、そこで考えるのか、一旦飛ばして次に進むのかを正しく判断してください。
基本的には一旦飛ばすものと心得て下さい。
これをやるだけで、試験の失敗が減るはずです。
最後に本格的な大問について書きます。
基本的には1行題の応用問題と同じです。
(1)や(2)には即答できるような問題も少なくなく、それはありがたく「知っている」で片づけてください。
問題はそうでない場合です。
もちろん一旦は飛ばしてもかまいません。
しかし、その問題が合否を分けるかもしれない時にどうするのか。
当然そこまで考えておく必要があります。
誘導に乗るのはかなり有力で、難問は大抵そうなっています。
誘導に乗ることによって、基本的な考え方が使えることに気付かせてもらえるのですね。
※VOL.273の開成の問題はこの誘導が丁寧な問題でした。
良心的過ぎて皆出来てしまったかもしれませんが。
誘導に乗ることもかなわないような問題は出来なくても仕方ないかもしれません。
ですが、当ブログの読者の皆さんにはそういう問題こそ攻略し、他の受験生に差をつけてもらいたいとも思います。
以下にヒントを書きます。
まずは、過去にやった問題と似ていないかどうかに着目します。
問題が似ていれば解法も似ていることも多く、なんとかなる確率が上がります。
この際大切なのは「検索」する能力です。
自分の頭の中にストックしてある情報と目の前にある問題の関連する部分がヒットするように「検索」しなければなりません。
ポイントは記憶の位置付けです。
記憶する際、整理された棚の中に置いておくようなイメージで覚えておくのです。
そうすることによって必要な時に必要な情報を抽出できるようになります。
具体的には分野別に整理された薄めの問題集を繰り返し解き、記憶の住所のようなものを作っておき、その後覚えるものはすでにある住所に整理していけば記憶の位置付けがうまくいきます。
これで、検索がスムーズにいくようになるはずです。
次に、小さな数字などで実験してみることも有力です。
特に何を言っているのかよくわからないような時、実際の数字でやってみることは本質に迫る手がかりを得るきっかけになるでしょう。
もちろん他のものに置き換えるのもいつでも使える手法です。
線分図・面積図・表・グラフ・絵・ベン図・箇条書き等どれも有力です。
図形では平面図形は同じ図を自分で描くだけで違いますし、立体の場合は平面図に置き換えるのが常套手段になります。
ただし、問題によって適したものとそうでないものがあるので、ここでの選択を誤らないようにするトレーニングは十分に積んでおく必要があります(特に速さ)。
見たことのないような問題は最終的には「粘り」「根性」といった精神力の強さが明暗を分けるかもしれません。
どちらにしても諦めたらゲームオーバーなので、最後まで頑張れるような準備が大切です。
まとめます。
・計算は工夫できるかどうかを絶えずチェック。
・「知っている」で済む問題はありがたく即答しておく。
・自分が即答できる範囲を把握しておき、そうでない場合は一旦逃げる。
・その場で考える必要がある問題はまずは誘導に乗ることを考える。
それがかなわない場合は
①似た問題を探す
②小さな数字で実験する
③別のものに置き換える
・どれも上手くいきそうもない場合は逃げる決断も必要。
・最後にものを言うのは「粘り」等の精神力。
こちらの養成も日頃から抜かりなく行いたい。
直前期になればなるほど、単なる解法の解説といった授業ではなく、「戦う姿勢を見せる」、「いかにして突破口を見出すか」といった内容の授業の価値が高くなることを再認識しました。
これって、金田が普段やっている授業そのものかもしれない・・・
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
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