VOL.241数学から考える受験算数(7)不等式・2次方程式・三角比
今まで6回にわたり「数学」についてみてきました。
「数学」の知識があると明らかに有利になることもありました。
ただ、そのために「数学」を本格的に学ぶべきというほどでもなく、そもそも「受験算数」と「数学」を明確に区別する必要もないようにも思います。
典型的な例が第1回で取り上げた「合同式」で、そもそも高校の数学でも習うことはないのですが、「受験算数」では「余りだけの計算」として普通にやっています。
ですから、特に「数学」ということは意識せず「頭の体操」のように捉えて楽しみながら取り組めばよいのではないでしょうか。
今回はまとめとして、今後も出題が予想される「数学」のテーマについて書きたいと思います。
◎不等式
ゆとり教育の頃は中学の「数学」からも消えた分野です。
これもまた「受験数学」では普通に扱われていますね。
頻出なのは「四捨五入の範囲」です。
〈例題1〉
整数Aを3倍してから十の位を四捨五入すると100になりました。
Aとして考えられる整数を全て求めてください。
〈解説〉
以下の不等式をたてることができます。
95≦A×3<105
全体を3で割って
31.6…≦A<35
よってAとして考えられるのは
(答) 32,33,34
これより高級な「連立不等式」の出題もありますが、特に問題なく対応できている受験生がほとんどでしょう。
◎2次方程式
本質的に「2次方程式」はかなり難しいです。
何も教わらない人が自力で解けるようになるのはほぼ不可能と思えるほどです。
私は中学で習う「代数」は極端な話、「2次方程式」を解けるようにするためにやっていると感じています。
ですから、「受験算数」で本格的に「2次方程式」に取り組むのはナンセンスです。
ただし、実際に「2次」を扱う問題は良く出されますし、最低限のことはやっておかなければなりません。
やるべきことは平方数を覚えておくことです。
1桁×1桁の平方数は九九なので特に覚える必要はありません。
11~21位までは覚えておいた方が良いです。
11×11=121
12×12=144
13×13=169
14×14=196
15×15=225
16×16=256
17×17=289
18×18=324
19×19=361
20×20=400
21×21=441
これらは常識だとは思いますが、ここで大切なのは「逆」のイメージをつかんでおくことです。
「361」を見たら、「19×19だな」と反応できること、これが肝心です。
それが身につけば受験算数で出題される2次の問題に対応することができることでしょう。
◎三角比
大昔は中学の範囲だったと思いますが、今は数Ⅰの範囲ですね。
実はこの「三角比」そのものの問題が入試で出されています。
たしかコサインの定義を説明してそれを使って解くような問題だった気がします。
〈例題〉
直角三角形の一番長い辺を斜辺といいます。
ある直角三角形の一番短い辺の長さaを斜辺の長さbで割ったら割り切れました。
また、その三角形の一番小さい角をC度とすると、Cは整数でした。
このときのCをもとめてください。
〈解説〉
直観力を試す問題です。
sin30°=1/2
のことなのですが、小学生は30°、60°の直角三角形をしっかりやっているので、答はすぐにわかったと思います。
(答) 30
他に答がないことをきちんと証明することが本当は難しいのですが、それは小学生の範囲を完全に越えているので、今回はパッとひらめくことが重要です。
以上、「数学」についてみてきました。
今後どのような問題が登場するかわかりませんが、指導者としては、「受験算数」が「数学」への橋渡しになることを意識してやっていくことが大切だと考えています。
自分が指導した生徒さんが、「数学」が得意になると、とても嬉しいですね。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。