VOL.207夏休み特集(2)
東京オリンピックで、日本人選手が大活躍しています。
特に新種目での抜群な強さは、目を見張るものがあります。
自国開催なので、無理のない時間帯に放送されますから、毎日ほどほどにですが楽しく観戦しています。
自分にとっての自国開催のオリンピックはこれが最後かもしれないので、目に焼き付けておこうと思います。
スポーツ選手からは学ぶことが沢山あります。以下に例を挙げます。
・ここ一番での集中力
・本番にピークを持ってくる調整力
・プレッシャーに打ち克つ精神力
・基本の徹底
・体作り
・楽しむ精神
どれも「受験」に活かせそうなものばかりです。
受験生は「観戦」というわけにはいかないでしょうから、私が「観戦」して、「受験」に活かせるエッセンスを受験生の皆さんにしっかり伝えたいと思います。
さて、今回も「夏休みの過ごし方」に関して書いていきます。
テーマは「勉強時間」についてです。
私は以前、「夏休みは10時間位勉強時間を確保した方が良い」といった内容のことを書いた記憶があります。それは今でもそう思うのですが、現実問題として、中身が充実した「10時間」を確保できている受験生がどれほどいるのか、という疑問もあります。
ただ机の前に座っているだけの「10時間」より、有意義な「5時間」の方が良いのは明白なので、単純な時間数だけの話ではないことになります。
少し、最低限必要な時間について考えてみます。
まず、取り組む課題を以下の3つとします。
※これはあくまで一例です。当然、内容は個々の事情で変えなければいけません。専門家と相談して決めるべきでしょう。
①基本的な1行題を中心とした問題集(400題)
②応用を含む問題集(100題)
③過去問(60分×5)
①の基本的な問題集は時間を読みやすいです。1問1分が基本です。
繰り返すことが前提なので、1巡したらまた最初からやっていくのですが、最初が1分だったら次は50秒、その次は40秒というように時間を短縮することを目指してください。
実際は1題ごとに時間を計るのではなく1ページ単位になると思います。難易度にばらつきがある場合や、苦手分野に取り組む場合は柔軟に対応し、制限時間を調整するのが良いでしょう。
例えば10題あるページの制限時間を10分と設定したならば、基本的には10分たったらやめるようにします。正確には10分で自分の答案をまとめる練習をするということです。
前からやっていって3題めが難しくそこで8分考えていたら時間がきてしまったというやり方は基本的にNGです。
私の感覚では、10秒以内に解ける見通しが立たなければ次の問題に向かうという方針が良いと思います。これを徹底すれば大抵の場合最後の問題までたどり着くはずです。
このようにして、10分は完全に集中するようにしましょう。その直後に答え合わせをします。
ここで、私が解説できれば理想的です。その受験生に合わせた解説を10分~20分行うことが多いです。習熟度が低いとどうしても解説時間が長くなる傾向にあります。
独学の場合は解説を読むことになります。ここはじっくりと取り組むべきところですが、「理解すること」が重要であり、ほとんどの受験生がやっているであろう「解き直し」は効果が微妙です。
その場での解き直しは記憶に頼る傾向が強く、ただ思い出したものをノートに書くだけの姿勢でやっていると「記憶の硬直化」が起きるもしれません。
但し、その場で再現できないのも困りもので、その場合は後から解くことはほぼ絶望となってしまいます。
私はその場での「解き直し」はやってもらうことが多いのですが、その際、「自分の頭を使っているかどうか」をかなり厳しくチェックします。どうやっているかは企業秘密です。ただ、普通の人にはこのチェックは難しいと思います。
話を元に戻すと、独学の場合、「解説の精読」が重要で「解き直し」は特に必要ないということにさせていただきます。
そうすると所要時間は解く際と同じぐらいと考えて差支えないので、1問1分とさせていただきます。
ここでの最低限必要な時間は以下になります。
1分×400×2=800分=13時間20分
②の応用問題は悩ましいです。自分の頭で考えるということを重視すると「制限時間ナシ」が妥当となる可能性があります。
もちろん、6年生となれば、時間の制約が厳しいですから、制限時間を決めなければなりません。
ここでヒントになるのは実際の入試です。試験時間を大問数で割り、1問あたりの使える時間を調べてみました。
筑駒→40分 大問4問→1問あたり10分
灘二日目→60分 大問5問→1問あたり12分
開成→60分 大問4問(3問の年もあり・小問集合が含まれることも多い)→1問あたり15分
小問がないような学校での1問あたりに使える時間は10分~15分と考えて良いと思います。
ですから普段の学習でも「10分」で何らかの成果を出せるような練習をしておけば、様々な問題に対応できるようになると考えられます。
さて、解説ですが、私がやるとすると時間は全く読めなくなります。
応用問題の場合、複数の分野にまたがることも少なくなく、それらの基本が抜けているような場合はどうしても時間が必要となります。
では、独学の場合はどうかというと、やはり「理解」が大切ということになりますが、「描く」練習はやるべきだと思います。複雑なものは頭の中だけでは限界があるので、描いて目に見えるようにすることは特に重要です。
また、応用問題は以下のどれかに当てはまることが多いです(複数ということもあります)。
・基本問題に比べて深さがある
・複数の基本問題の考え方が組み合わされている
・与えられた情報が複雑で整理するのに手間がかかる
・発想の飛躍が必要
・オリジナリティーが高い
どれに当てはまるかという分析を行い、その対策となるような技術を習得することができれば、充実した学習となるでしょう。
以上をキッチリと行うとそれなりに時間がかかるので、ここでの必要時間は以下とすることにします。
(10分+15分)×100=2500分=41時間40分
③の過去問演習はまだ早いという意見もあると思います。実力が一定レベルに到達していない場合、ボロボロの点数を取りかねないからでしょう。
そういったケースでも実力に見合った学校の過去問を解くことは、今後高めていく必要のある「得点力」の養成に不可欠なので、最低でも5回位はチャレンジして欲しいと思います。
過去問の良いところを挙げます。
・パッケージになっているので、様々な分野の問題に取り組める。
・選抜試験なので、得点がばらけるように作ってあることが多い。
・それぞれの学校のプライドが感じられるような良問の宝庫。
よって、過去問に取り組むことによって見込まれる効果は次のようになります。
・全体の復習ができる。
・「取捨選択」「解答順」「確かめ」「時間の管理」といった試験特有の練習ができる。
・算数の問題を通じてその学校の先生達と「会話」することができる。
かなり有効な学習と言えるのではないでしょうか。
さて、これにかける時間ですが、基本的には制限時間通りで良いと思います。
問題は直しをどうするかです。
私が解説する場合は、「応用問題」と同じことになります。やってみなければわかりません。
但し、それまで一緒にやっていた場合は、過去にやった「基本問題」と「入試問題」を関連付けることができます。難問対策はこれが肝心なので、非常に効果的だと思います。
独学の場合は、ここでも「理解」が大切で、できれば解くために必要な最低限の「知識」がどのようなことかについてもチェックしてもらえればと思います。
時間に関しては個々の事情もあるでしょうからここでは試験時間と同じとすることにします。
試験時間1時間として必要時間を求めます。
60分×5×2=600分=10時間
ということで、①~③の必要時間が決まりました。トータルは
13時間20分+41時間40分+10時間=65時間
となりました。これを40で割ると
65時間÷40=1.625時間=1時間37分30秒
となり、算数は1日2時間弱の密度の濃い学習が、夏休みの目安ということになりました。
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