VOL.195規則性で間違えない(1)
今回から「規則性」についてやっていこうと思います。
「規則性」はやや特殊な分野だと思っています。「できる側」と「できない側」の逆転が起こる可能性があるからです。
なぜそう思うかを書きます。
「書き出し」は誰でもできるのに対し、規則性を見抜いて計算で求めるのは「できる側」でなければ難しいかもしれません。
算数に自信がなければ、「規則性」の問題は躊躇なく書き出すことでしょう。もちろんそれは最善の策である可能性が高いでしょうから、私も推奨します。ところが「できる側」には「計算」という選択肢もあるので、若干の悩ましさがあります。
良くある年号の番目をきかれた場合は「計算」しかないでしょうが、「100番目」あたりだと「書き出し」も十分あり得ます。
「書き出し」と「計算」のミスの確率ですが、どちらがどうということはハッキリ言えません。ただし、「書き出し」は量が増えれば増えるほどミスの確率が上昇し、「計算」の場合はそこまで単純ではないという印象です。
これらの背景をもとに、今年の開成の入試問題を考えてみたいと思います。
分数1/9998を小数で表したときの小数第48位、56位、96位は?
という問題なのですが、なかなか手ごわい問題でした。
少し筆算すると「0.000100020004…」から4桁で区切れば1→2→4→8→16となっていくことが予想されます。
48位は「2の11乗の一の位」で8が答とわかります。
56位も同じ要領で「2の13乗の一の位」で2とやりたいのですが、それが罠となります。2の14乗が5桁になるのでその影響で答は
2+1=3
です。
さらに96位は「(2の23乗の一の位+2の24乗の万の位)の一の位」で5とやりたいのですが…
2の25乗の影響を受け、
5+1=6
が正解となります。
結局、56位と96位をきいてきたのには意味があったのですね。
2つの罠を見抜き完答した受験生はかなりハイレベルだったと思います。
ところが、完答した受験生の大半は上のような考え方をしたわけではなかったかもしれません。
モリモリ筆算した可能性が高いと個人的には考えています。小数第96位なら十分可能ですね。
これが最初にお話しした「逆転現象」です。
算数に自信があり、プライドが高ければ「モリモリ筆算」はやらなかったでしょう。罠を見抜ければ最高だったのですが、引っかかってしまったかもしれません。
私のスタンスですが、もちろん「何でもかんでも書き出し」は否定します。かと言って、「計算だけ」にこだわるわけではなく、「最初」と「最後」は「書き出し」を推奨しています。
「最初」は「正体を掴む」ために、「最後」は「確かめ」のために「書き出し」を利用するのです。
先の問題では規則性を見抜いて答を出した上で、部分的に筆算して確かめるのが良かったというのが私の結論です。
※ 今回はたまたまだったと思いますが、結果的には「モリモリ派」に軍配が上がったように思います。素晴らしい問題だっただけに少し残念です。
では今回のまとめです。
1 規則性は「書き出し」と「計算」のどちらでいくかの判断が肝心となる。
2 その判断に「問題」以外の「本人の実力・タイプ」が関係する。
3 理論を緻密に積み上げることができない場合は躊躇なく書き出すことが得策となることが多い。むしろそうすることで逆転もあり得る。
4 算数が得意でプライドがあるならば「単純な書き出し」は極力避けたい。普段の学習では特にそうだが、試験においては柔軟に対応する必要がある。
5 私のお勧めは「ハイブリッド」で、最初と最後に効果的な「書き出し」を交えることで「正解率」を高めたい。
何回になるかわかりませんが、「規則性」の正解率を上げるために何をすれば良いか追及してみたいと思います。
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