VOL.147【入試問題を解いての感想】 -(4)開成-
新型コロナウイルスの影響で世界中が混乱しているようです。
トイレットペーパーの買い占め騒動は日本だけかと思いきや、様々な国で起きているようですし、店舗の閉鎖をする国もあるようです。
どうしてこんなことになってしまったのか…
私は専門家ではないので、何が真実か、わかっているわけではありません。
ただ、封じ込めに成功した国とそうでない国を比較することはできます。
若干結果論のようになる部分もあるかもしれませんが、やはり「最初が肝心」だったということになるのではないでしょうか。
では、日本はというと・・・
その結論を出すにはもう少し時間が必要でしょう。
今、日本では感染の不安、今後の社会に対する不安等を抱えて、つらい毎日を送っている人々がいると思われます。
その中にあって新小6生である受験生の立場はわかりやすいといえるかもしれません。
「家で勉強する」
いたってシンプルです。
私たちはそのような「頑張る受験生」を精一杯応援していきたいと思います。
さて、続いては「入試問題を解いての感想」です。
今回取り上げるのは「開成」です。
首都圏最難関校のうちの一つであり、東大合格者数No.1は実に39年連続!
当然、入試問題も最高峰の上質なものかといえば必ずしもそうではなく、どちらかというと「蓋を開けてみなければわからない」怖さがあるのが特徴と言えなくもありませんでした。
前々回の問題が明らかに難易度の設定の失敗だったので、前回はその分気合が入ったのか、周囲を黙らせるような圧倒的な内容でした。
そうなると、本当に真価が問われるのが本年度の入試問題ということになります。
いったいどんな問題だったのでしょう。
昨年度も素晴らしかったですが、本年度もそれをさらに思考力重視にしたような圧巻の内容でした。
実は昨年「開成ガイダンス」という催物がありそこで、「過去問は多めにやった方がよい」という趣旨の話をしたのですが、1~3は何となく過去に似たような問題があったと感じさせるものでした。
4は本校でも頻出の「影」の問題でしたが、「灘」の過去問をやっていなければ苦しかったかもしれません。
以前に比べ、煩わしさがかなり軽減され、本質的な考える力が重視される非常に良質な問題だったと思います。
◎開成
1ロボットの進み方を推理する問題
ロボットが2つ、動き方を指示するカードが4種5枚×2、ロボットの距離をあらわすグラフ、と複雑になる要素がちりばめられています。
ただ、本質的にはカードの並べ方の問題なので、ある部分に着目し絞り込んだ後、地道に調べていけば、正解できる可能性は高かったと思います。
逆に言えば、この問題でミスが出たり思わぬ時間の消費があった受験生はそこで「終了」となってしまったかもしれません。
「入り」は少し慎重にしなければなりません。
22つの円周上を動く2点にうまく乗る問題
そこそこ複雑な設定ですが、理解してしまえば単純で、行って帰ってくるだけです。
(1)(2)は角速度や比をうまく使えば「旅人算」に持ち込むことは容易でしょう。
(3)も(2)と本質的には変わらないのですが、動く道のりを求めなければならないので、多少計算が面倒ではあります。
本校の受験生にとっては全く問題ないレベルですが。
36種類の硬貨を使っての払い方の種類の問題
よくあるお金の問題。硬貨の種類を多くし、さらに払う金額も大きくすれば、どんどん「何通りか」は大きくなりますから、難易度の調整の腕の見せ所です。
以前、似たような問題が出たときは計算で答が出たので、答がかなり大きくなりました。
今回は①~⑥までの結果を利用して⑦、⑧を求める際、しっかり書いて調べる姿勢が大切でした。
全て調べ切る根気が必要で、このあたりで差がついた可能性はあると思います。
4影の問題
小屋の天井と側面の窓があり、そこから日が差し込むという設定です。
そして小屋の内壁にどのような影ができるかを作図する問題でした。
これはできなかった受験生がほとんどでしょう。
そういう意味では差があまりつかなかったと思います。
類題もあまりなく、灘二日目の2011年4が役に立ったかもしれない、という位です。
実は、原理を知っていればそれ程難しくないのですが、そこまで手が回らなかったという受験生が大半だったでしょう。
本年度の問題は本校が欲する人材のイメージとぴったり重なるような、良質な問題だったと思います。
受験生がこの問題に取り組むのはまだ先だと思いますが、挑戦する際は合格者平均点を越えられるように、今から日々の学習を頑張ってください。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の1題買い占め(条件整理)
難易度★★☆☆☆
M国では3月2日(月)に店頭からトイレットペーパーが消えました。
理由はSNS上の「トイレットペーパーが不足する」というデマが拡散し、一部の人間が買占めを始めたことです。
調査の結果以下のことがわかりました
- 2月24日(月)まではすべてのM国民は3ロール分の買い置きがあり、店頭にはM国民の人口の2倍のトイレットペーパーが並んでいた。
- 1人あたりのトイレットペーパーの消費量は1週間で1ロールである。
よって、2月24日~3月1日までの間にトイレットペーパーは1ロール使用され1人あたりの買い置きは2ロールになっていた。 - 未成年者の子供がいる家庭の間で「4人家族なら16ロール×20の買い置きが必要」という噂が流れ、その割合で買占めようとした家庭は未成年者の子供のいる家庭の20%であった。
この買占めをおこなう人たちを「買占めグループA」とする。 - 10ロールの買占めをしようとした人(「買占めグループB」)と5ロールの買占めをしようとした人(「買占めグループC」)がそれぞれ全体の10%ずついた。
- 親と同居している未成年者は全人口の24%である。
またそのような子供がいる家族の人数の平均は3.2人である。 - トイレットペーパーは100%M国製で、1週間にM国民の人口と同じだけ生産され、毎週月曜日に店頭に並ぶように出荷されていた。
- すべての製造メーカーの在庫を合計するとM国民の人口の2倍であった。
- 政府は「SNS上の「トイレットペーパーが不足する」という情報はデマであり、生産は間に合っている」と発表すると同時に、製造メーカーに増産を要請した。
それを受け製造メーカーは在庫を全て出荷(3月20日までに全て店頭に並んだ)した上で生産量を2倍に増やし、従来の「月曜日」以外に「木曜日」にも店頭に並ぶように増産を開始した。
3月12日(木)から実際に店頭に並んだ。 - ところが、買占めの勢いは凄まじく、買占めグループA~Cは自分たちの買占めの目標に到達するまでは買占めをやめようとしなかった。
その結果、買占めをしない人たちのところにはなかなかトイレットペーパーが届くことはなかった。
(1)すべてのM国民にトイレットペーパーが届くのは何月何日ですか。
(2)あなたが経営者なら、政府の増産要請にどのように対応しますか。(この問題には正解というものはありません。議論のネタにしてもらえればありがたいです。)
解答が表示されます