VOL.32志望校対策(5) 「渋谷教育学園幕張」
千葉を代表する難関校です。共学では首都圏トップクラスでしょう。
比較的新しい学校ですが、進学実績が素晴らしいこともあって、高倍率の入試となっています。
算数の入試問題の内容は、いわゆる「男子難関校タイプ」です。
今まで取り上げた中では「開成」「聖光学院」と同じようなタイプに分類されるでしょう。
ただ、本校では「計算問題」や「一行題」は出題されていません。
「数の性質」「場合の数」「平面図形」「立体図形」それ以外に1~2題という出題が続いています。
来年もその通りになるという保障はありませんが、上記4分野の出題可能性はかなり高いでしょう。
難易度もある程度高いところで安定しており、その分合格者の平均点も低くなっています。
それでは対策に入ります。
共学ということで、男子と女子では少し考え方を変えても良いかもしれません。
男子は他に受ける男子校の対策がそのまま本校の対策になる可能性があります。
極端な話、「灘(特に二日目)」の対策を十分に行えば本校の対策として通用するでしょう。
首都圏でも「開成」「駒東」「聖光学院」等の対策がそのまま本校の頻出分野・難易度と重なるので、一遍に対策とすることが可能です。
そのようなことを踏まえると、難問が出題されやすい上記4分野に対して「真っ向勝負」といった様相になります。
算数が得意な受験生が点数を稼ぎにいくイメージです。
そして十分にそれが可能だと思います。
女子の場合は併願校が女子校・共学校どちらにせよ本校ほど骨っぽい問題を出すところがあまりありません。
強いて言えば「豊島岡」「渋渋」「西大和」あたりが難易度的には近いでしょうが、これらの学校の対策がそのまま本校の対策に繋がるとは言いにくいでしょう。
そこで、場合によっては「かわす」ことも視野に入れたほうが良いと思います。
「場合の数」と「立体図形」の難問は深追いしないという方針を徹底しておくのです。
例えば今年度の5(2)は受験生の大半が不正解だったと思われるので、出来なくても合否には影響がなかった(もちろん指導者はできなければいけません。この問題で指導者の力量が量れます。)と思われます。
むしろ解けると思って時間を使い、結局不正解だった受験生が痛手を負う結果になっています。
ただ、本校が第一志望で、算数で点数を稼ぎたい女子もいるでしょう。
そういったタイプの女子は「男子トップ校対策」を実践してください。
それでは、4つの分野について具体的な対策を考えていきましょう。
Ⅰ 数の性質
まず、知識の充実は絶対に必要です。高級な考え方までしっかり頭に入れておいてください。
また、問題文が長文であることが多いので、しっかりと情報を整理できるように練習しておきましょう。問題文にアンダーラインを引いたり、見やすい表を書いたり、小さい数で調べたりといったことが自然にできるようになるまで、色々な問題を解きましょう。
Ⅱ 場合の数
数年前まで、少し高級な典型問題が出題されていましたが、近年はそこからさらに進化している感があります。つまり「見た事がない問題」が出題される可能性が高いということです。
この「見た事がない問題」に対してどのように対応するかですが、普段から「考える」習慣を身に着けておくということに尽きると思います。「考える」ためにはベースとなる「知識」が必要ですから、基本的な知識は高級なものを含め充実させておいてください。
また、「考える」ということは「脳にスウィッチを入れる」ということでもあるので、まずは「書く」ことが第一となります。躊躇なく書き出して、その後は頭をフル回転させて効率よく解いていくというイメージです。
これらの練習は本校の過去問を解くのも良し、他の難関校の問題をとくのも良しですが、正解に至るまでの考え方が特に重要なので、指導者にチェックしてもらうと良いでしょう。
Ⅲ 平面図形
他との関係で、ここは点数を稼ぐ分野となります。苦手というわけにはいきません。ただし、出題のバリエーションが豊富なので、様々な問題に対応できるようにしておく必要があります。ある程度量をこなすことが有効でしょう。
以前は、定規とコンパスによる作図が頻出でしたが、直近は「作図」という問題はありませんでした。来年どうなるのかは不明ですが、中学1年生が習う作図はやっておいたほうが無難でしょう。
Ⅳ 立体図形
空間認識能力を問うような問題が多くみられます。立体が苦手な生徒さんが多い理由のひとつに、実物を見ることができないということがあります。最近は立体切断の教材等も市販されているようですが、実際の入試の複雑さには追いついていません。必然的に手作りということになりますが、これは保護者または指導者の役目ということになります。
私も相当な数の模型を作ってきました。やはり実物を見ると生徒の納得度が違います。可能であるならば、保護者の方が模型をつくってあげることをおすすめします。
最後にまとめます。
- 男子難関校タイプであり、ある程度高い難易度がキープされている。
- 頻出分野が固定されていて、そのいずれもが難問が出題されやすい分野である。
- 問題数が少ないので、苦手分野があると危険。また1問あたりの配点が大きいのでミスも避けたい。
- 合格者平均点はそれほど高くないので、算数でドカンと稼ぐことも可能。また、他科目との関係で、難問は避け無難にまとめるという戦略も有効(特に女子)。
- 忙しい試験ではなく、じっくり考える余裕はある。その過程で作図は必須となるため、書いて考えるということをどれだけやったかが重要である。
共学校としては算数の難易度は高いですが、その分やりがいはあると思います。
積極的にチャレンジしていきましょう。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の練習問題渋谷教育学園幕張
難易度★★★★☆
2個のさいころ「甲」と「乙」があります。
「甲」は正四面体のさいころで1~4の目が出ます。
「乙」は普通の立方体のさいころです。
この2個のさいころをそれぞれ2回ずつ投げて、次のように①~④までの手順で数A、B、C、Dをつくります。
【手順】
① 1回目にさいころ「甲」を投げ、出た目の数をAとします。
② 2回目にさいころ「乙」を投げ、出た目の数をBとします。
③ 3回目にさいころ「甲」を投げ、出た目の数に整数mをかけ、それに整数nを加えた数をCとします。
④ 4回目にさいころ「乙」を投げ、出た目の数に整数pをかけ、そこから整数qを引いた数をDとします。
いま、CとDがどの目が出たとしても素数となるようにm、n、p、qを定めるとき、以下の問に答えてください。
(1)
m、n、p、q が決まれば、C は4通り、D は6通りの数が考えられますが、その10 個の数全ての和が最小になるように m、n、p、q を定めてください。
(2)
(1)で求めたようにm、n、p、qを定めたとき、以下の場合のさいころの目の出方 は何通りありますか。
① 「A+B+C+D」が6の倍数
② 「A×B×C×D」の約数の数が16個
解答が表示されます