VOL.132【受験お役立ち情報】 -「優先順位」-
私は、中学受験で一番キツい時期はちょうどいま、6年の11月あたりだと思っています。
直前は良い意味で開き直れるのか、意外と精神的に安定していることが多いのですが、2、3ヶ月間がある今という時期はかなり厄介です。
この時期は模試も複数受験しているでしょうから、いやでも成績を突き付けられます。
どんな成績であろうと、悩みは尽きないものです。
「良好 → 受験校の変更を検討。」
変更すれば学力が足りない状況になる可能性が高い。
「安定 → 頑張っているのに学力が伸びないことにストレスを感じてしまう。」
周りがどんどんできるようになる気がして、不安が増大する。
「悪化 → 毎日が地獄のように感じられる。」
ストレスの擦り付け合いのようになってしまうと、それはもう典型的な負けパターン。
悪い例を挙げましたが、皆さんにはこのようになって欲しくありません。
考え方としては、「なるようにしかならない」と、少なくともマイナスの感情は持たないようにするのが良いと思います。
悲観すればするほど学力が上がれば良いのですが、実際はその逆で、算数の場合は特に「マイナスの感情」が悪影響を与えます。
「本人の学力を客観視し、今やるべきことを淡々とこなす」
というのがこの時期を乗り切る最善の方法だと思います。
特に肉親同士の場合、その感情の向け方が難しくなってしまうので、注意が必要です。
模試の成績が悪かった時の対応が難しく、ここで感情的になって叱ってしまうとろくなことはありません。
我々のような専門家がついている場合は、
「成績に関しては親は口出ししない」
ことを徹底してもらえれば、大抵の場合うまくいきます。
不安が大きいこの時期こそ、親御さんにおかれましては、あたたかい気持ちでお子様を見守ってあげてください。
さて、今回の【受験お役立ち情報】は「優先順位」についてです。
いよいよ残りわずかとなりましたが、小学生が本当に伸びるのはこれからです。
残り時間の活用で合否が分かれるといっても良いでしょう。
そのための「優先順位」を考えてみたいと思います。
まず、把握しておかなければならないのは「残り時間」です。
勉強時間をあと何時間確保できるのか計算してみてください。
以下の分類をするとわかりやすくなります。
①学校
②学校+塾
③塾
④フリー
⑤その他
例えば
「 ①6H ②2H ③3H ④10H 」
という具合にそれぞれ確保できる勉強時間を割り出し、残りの勉強時間の見込みを計算します。
次に過去問演習に必要な時間を計算します。
どの学校を何年分やるかはもう決まっていると思うので、その分の「制限時間×1.5」を先ほどの見込みの勉強時間から引きます。
こうして残った時間が、自由に使える時間ということになります。
そして、この時間を何に使うかが問題となります。
- 科目の優先順位
今までは四教科の優先順位は「算数≧国語>理科=社会」というケースが多かったと思いますが、直前になればなるほどこれが逆転します。
理社の方が算国よりも少ない時間を点数に変えやすいのです。
特に、理社の知識が甘くて点数が取れていなかった受験生も、残り2、3週間でそれなりに形をつくることが可能です。一般的には残り1ヶ月を切ったあたりから理社の優先度を上げると良いということは頭に入れておきましょう。
- 塾の宿題
塾の宿題がなければこの項はスルーでかまいません。
量が多い場合は要注意です。我々個別指導の「敵」とまでは言いません。
しかし、一律に出される「宿題」は個々にみている我々から見れば、効率が悪いことは疑いようがありません。受験生はそれぞれ現在置かれている状況が異なるのですから、それに合わせてやるべきことを定めるのが当たり前です。
ただ、集団授業ではそれはほぼ無理です。ただ、塾に通っている以上「全部やらない」ということは難しいでしょう。
小学生の場合「怖い先生の宿題」はやり、「優しい先生の宿題」はやらない、なんていうこともあるようなので、しょうがないところもあります。そこでおすすめなのが、「やるかやらないかを判断する」ことです。
実際の試験でも必要な「取捨選択」の練習を「宿題」を使ってやるようなイメージです。
そして「やらない」と決めたら時間をかけないでください。
こうすることによって自分が自由に使える時間を増やすことができます。もし「宿題」をやらないことで、塾の先生に叱られるようでしたら、それはやめてもらうように親御さんが交渉することをお勧めします。
「叱られたくないから宿題をやる」というような姿勢では、効果的な学習になるとは思えません。
能動的な姿勢を身に着けられるようにしていきましょう。 - 得意を伸ばすか弱点を埋めるか
これも悩ましいテーマです。
「弱点」を埋めるのが良さそうなのですが、現実的に残り時間で点数を増やすことが可能なのかどうかという問題があります。
「やるにはやったが結局弱点を克服することはできなかった」ではまずいので、この見極めは慎重にしなければなりません。「弱点」といっても全く駄目な場合とあと少しで克服できそうな場合があります。
直前になればなるほど前者に取り組むのはリスクが大きくなります。もう一押しの分野があるならば、それを優先すべきでしょう。
例えば「規則性」で「1」ずれることが多い場合などです。では、「得意を伸ばす」のはどうでしょうか。
こちらは「得点の伸び」という意味で効率が悪くなるかもしれません。
すでに90%できているのを95%にしても5%分しか増えません。得意分野の方が気分よく進められるという意味ではやる価値はあるのですが・・・
このテーマについては、指導者がいる場合は相談したほうが良いと思います。
- 算数の分野ごとの優先度
この件については私が最も重視しているところでもあります。
極論を言えば、これから受ける試験で出題される分野をやれればそれが最高です。
あるいは出ないところはやらないとも言い換えることができます。実際にこれを完璧に当てるのは不可能でしょうから、できる限り正確な予想をする、あるいはある程度合理的に絞り込むといったことをしたいですね。
過去の私を思い出すと、分野に濃淡をかけるような指導をしたときは、概ねそのような出題がされたことが多かったです。
あたり前ですが、特定の分野が出題される可能性が高いと踏んでいるからそのような指導をしているのであって、なんでもかんでもヤマを張っているわけではありません。基本的にはバランス良く学習することを心掛けています。
最終的には分野の枠は取り払われるとも考えられますので。しかし場合によっては思いっきりヤマをはることもあります。
このままではどうしても足りないというケースでは、多少のリスクは負わないと勝負にならないでしょう。
以上みてきたように自分の時間を確保したとして、その時間を何に使うかは結構悩ましい問題です。
指導者がいればよく相談して決めればよいでしょうが、そうでない場合は、慎重に決める必要があります。
考え方のコツは、実際の試験で何点増えるかをイメージすることです。
例えば最難関校を受験するのに基礎力向上のトレーニングをしても1点も増えるような気がしません。
こういった、点数が増えない勉強はしないことです。
残り少ない時間を有効に使って、皆さんの夢を現実に近づけてください。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。