VOL.127【合格へのシナリオ】 -二兎を追う者二兎を得た

整数問題合格へのシナリオ

このところ暑さもやわらぎ、大分過ごしやすくなりました。

名門会では、9月いっぱいはポロシャツ着用のクールビズ期間ですが、来月からはYシャツになります。
シャツも変わりますからこれを機会に更に気を引き締めていきたいですね。

今回の【合格へのシナリオ】に入る前に、算数の試験問題のタイプについて、少し考えてみたいと思います。

「SAPIXオープン」では「Aタイプ」と「Bタイプ」という2つのタイプの問題が出題されます。

簡単に言うと「Aタイプ」は「処理能力」、「Bタイプ」は「思考力」を見る問題ということになると思います。
そして、実際の入試問題も「Aタイプ」「ABタイプ」「Bタイプ」に分類され、合否判定の精度が上がるとしています。

「Aタイプ」の問題を出題する典型的な学校として浮かぶのは「慶應中等部」や「女子学院」で、「Bタイプ」は「栄光学園」や「暁星」といったところでしょうか。

「ABタイプ」は純粋な「Aタイプ」・「Bタイプ」以外と考えると、いろいろな学校が当てはまると思います。

さて、「SAPIXオープン」を受験し結果が出たとき、「Aタイプ」と「Bタイプ」で成績に大きな差があるときがあります。

その中で危険なのが
「Aタイプはあまりできていないが、Bタイプの成績が良い」
ケースです。

「Bタイプが得意なんだから、Bタイプの学校を受ければ良いじゃないか」
と言われそうですが、そんなに単純じゃありません。

「Aタイプ」の偏差値が志望校に届いていない場合は、そもそも基礎学力が足りていないので、そのまま基本を放置したままで試験に臨むとかなり危険な入試になってしまいます。

また、純粋な「Bタイプ」の学校というのはほとんどないという事情があります。
「麻布」というと典型的な「Bタイプ」の学校というイメージがありますが、実は前半は「麻布的Aタイプ」の問題が並ぶことが多いです。
そして、それらを全問正解し、後半の「麻布的Bタイプ」の問題の誘導部分を正解すれば合格に必要な点数はおおよそ集まります。

私個人は、模試でみたいのは「Aタイプ」のほうで、「Bタイプ」は参考程度ということが多いです。

それでは【合格へのシナリオ】に入りましょう。

ここから先の「Aタイプ」は
「シンプルな問題で知識があればある程度短い時間で解答できるような問題」
とし、「Bタイプ」は
「いきなり解くことは難しく、いくつかの基本を組み合わせたり、発展させなければ解けない問題や表現力が必要な問題」
ということにします。

野沢君の第一志望は2月2日に試験がある「Bタイプ」の学校でした。
しかし、親御さんの希望で「Aタイプ」寄りの学校を2月1日に受け、2月3日が一応滑り止めの「Aタイプ」寄りの学校という予定でした。

ところが、秋の塾の面談で1日の受験校を変更するように強く勧められたようです。
次のようなことをハッキリと言われたとお母さまが嘆いていました。

「1日はそこを受けてもかまいませんが、まず間違いなく不合格だと思います。少し偏差値を下げたS学院を受けてください。そこは4日もありますから、2回受けるつもりで。もちろん2日は第一志望ですから受けるのはかまいませんが、模試のBタイプの成績から考えてまず無理です。3日は偏差値から言ってとても滑り止めにはならないので、5日以降の受験も視野に入れる必要がありますよ。」

以上のような内容だったと記憶しています。
模試の成績を客観的に判断すれば正論かもしれませんが、頑張っている本人とマンツーマンで接している私にとっては、かなり厳しい言葉に感じられました。
それと同時に「第一志望だけはなんとかしてやる」という強い気持ちが込み上げてきました。

野沢君は6年春から担当していたので、志望校対策は密かに進行しており、それなりに自信がありました。

実は私の考え方は、「Bタイプ」の学校こそ「Aタイプ」の問題に強くならなければならないというものでした。

「Bタイプ」の特徴はその場で考えたり、書いたりする必要があるということです。
要するに「知ってるよ」では片付けることが難しいということなのですが、だからといって何も知らなくても良いというわけではないと思うのです。

むしろ知識は多いほど良いかもしれません。

これは情報化社会の弊害かもしれませんが、一度世に出てしまえばどんなにオリジナリティーにあふれた問題でも、知識で解決することが可能となってしまう可能性がある、それが近年の受験です。

つまり、昨年度までは「Bタイプ」だった問題でも、今年度同じような問題が出たならば、それはもう「Aタイプ」になっているかもしれないのです。

さすがにそこまで極端ではないにせよ、「Bタイプ」の問題であろうとも、少なくとも部分的には「知識」を生かせるはずです。
ですから、まずは「Aタイプ」の問題をしっかりと身に着けるというのが私の基本方針です。

ただし、「Aタイプ」の学校への対応と、「Bタイプ」を見据えた「Aタイプ」への取り組みでは若干の違いがあります。

簡単に言うと「深さ」が異なります。
「知識」に深さがないと「考える」ことに繋げることが難しくなるのです。

さて、野沢君ですが、夏休み前までは徹底的に「Aタイプ」の問題に取り組みました。
もちろん、かなり高級なものまで、妥協はしませんでした。
正直、出来はあまりよくありませんでしたし、本人はきつかったと思いますが、ここでじっくり取り組めた(頑張れた)のが第一の勝因だと思っています。

夏休みが終わり、秋に入ってからはより「考える」ということを意識するようにしました。
この時期に授業で扱ったのは典型的な「Bタイプ」の問題と、パッケージになったやや厳しめの問題でした。
そのせいか、模試の前半の問題は調子が狂うらしく、取りこぼしが多かった気がします。

ですから、塾の成績は相変わらずパッとしませんでした。
ちょうど塾の面談で冒頭のような厳しい話をされた時期でもあります。

では、私はどのように考えていたかというと、
「第一志望である2日はなんとかなる」
と踏んでいました。
春から地道に積み上げていますから、「Bタイプ」対策に抜かりはありません。

さらにラッキーなことに、冬休みから1月にかけて十分な指導時間を確保していただきました。
ここで「過去問演習」を徹底することにより、「得点力」が大幅に上昇しました。
ここが第二の勝因だったと思います。短期間での本人の対応も見事でした。

そして、2月2日当日、試験会場に握手応援に行きました。
私が手を握ると、彼は笑顔で返しました。
この時、合否はわかりませんが、力は出せるだろうと少しホッとしたことを覚えています。

そして結果がでました。

2月1日 慶應普通部
2月2日 栄光学園
2月3日 浅野

すべて合格でした。

基本からきちんと積み上げていけば「Aタイプ」も「Bタイプ」もない、そんなことを教えてくれた生徒さんでした。

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今週の1題整数問題

難易度★★★☆☆

AとBがともに整数であるとき、AをB回掛け合わせたものを
A*B
とあらわすことにします。例えば
3*2=3×3=9
です。

(1)A=2のときについて考えます。
①2*C-1=1+2*1+2*2+2*3+2*4+2*5+2*6+2*7
が成り立つとき、Cはいくつですか。
②D=2*2-1=3
E=2*3-1=7
DとEはともに素数ですが、「2*N-1」であらわすことができる素数はいくつもあります。
このような素数で3と7以外のなるべく小さいものを2つ答えてください。

(2)整数Mを2の倍数とします。
またMの約数の総和をPとします。
例えばM=6のときP=12なので
 P  M  =2
です。
またM=28のときP=56となり、やはり
 P  M  =2
です。
このように
 P  M  =2となるようなMで6と28以外のなるべく小さいものを2つ答えてください。

クリックすると
解答が表示されます
<答>(1)① 8 ② 31、127 (2)496、8128
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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