VOL.117【速さの本質に迫る】 -速さの問題の複雑さに負けない

速さ

先日街で行列を見かけました。
いったい何なのかと思っていたら、並んでいた人たちのお目当ては「ブラックタピオカミルクティー」のようでした。

「タピオカミルクティー」は昔からあったような気がしますが、きっと今の流行は昔のものとは異なるのでしょう。
私は行列に並ぶのがあまり好きではないので、直接確かめることはできませんが、何となく興味が湧いたので、少し調べてみることにしました。

そもそも「タピオカ」とは何なのか?
原料が「キャッサバ」という南米原産のイモのような植物ということは知っていました。
これが中学入試(理科)で出るかというと、直接は聞いてこないとは思いますが、
「なぜタピオカの触感はモチモチなのか?」
「タピオカは粒状に加工されているがどのような力を加えてあのような形にするのか?」
といった設問は十分に考えられますので、少し調べておきます。

そもそも「タピオカ」の意味は「でんぷん」で、ブラジルの先住民のトゥピ語で「でんぷん製造法」を意味する言葉からきているそうです。
あの粒々の製造法ですが、まず「キャッサバ」の根茎をすりつぶして水に放ち、水中に沈殿したでんぷんを得ます。
何回か水をかえ、沈殿を繰り返すことで有毒なシアン酸を除去した後、でんぷんを水で溶き加熱します。
この過程で糊化が生じ粘度が増します。
これを容器に入れ回転させることにより球状に加工します。
それを乾燥させたものを台湾などから輸入しているようです。
それを煮て戻すとあのモチモチの「タピオカ」になるのですね。

ちなみに「タピオカ」の色は本来白っぽく、「ブラックタピオカ」はカラメルなどで着色されているのだそうです。

<出題例1>

最近「タピオカミルクティー」が大流行しています。
人気の秘密は「愛らしい見た目」と「タピオカのモチモチした触感」だそうですが、「タピオカ」はなぜ「モチモチ」しているのですか。次の中から選んでください。
1.原料に含まれるグルテンが粘りを生むから。
2.原料がモチ米だから。
3.原料に含まれるでんぷんは水に溶くことによって粘度が生じるから。
4.ブラックタピオカはこんにゃくを黒く着色したものだから。

(答) 3 

<出題例2>

「タピオカミルクティー」に入っている「タピオカ」は5mm程度の大きさの粒状です。
これは容器に入れ回転させることにより球状に加工したものです。
ではこの加工の際、「タピオカ」に働いているのはどのような「力」ですか。
漢字3文字で答えてください。

(答) 遠心力 

ここまで書いて無性に「タピオカミルクティー」が飲みたくなってきましたが、やはり行列に並ぶのはいやなので、ブームが鎮静化するまでお預けとなりそうです。

「理科」っぽい話が長くなってしまいましたがここからが本番です。
今回からしばらくの間、「速さ」について考えてみたいと思います。
今回は最初なので、基本的なところから始めます。

入試という観点から「速さ」を見たとき、その重要度はかなりの高さになります。
その理由は「差が付きやすい分野」だからです。

難問が頻出の分野は「立体図形」「場合の数」「数の性質」「速さ」といったところになりますが、「速さ」に関しては全滅ということが考えにくく、できる人はできる分野と言えます。
最上位の受験生の間では「差がつかない分野」と言われることもあり、仮にこれを落とすと致命傷になる可能性があります。
算数で稼ぎたいと考えている受験生ならば、「速さ」は「得点源」にしておく必要がある分野です。

先ほど「速さ」は難問が頻出と書きましたが、他分野とはその難しさの質が異なるような気がします。
まずは分野ごとの難しくなる原因を考えてみます。

立体図形 立体感覚が必要な問題はそれがないと苦しい。そもそも3次元のものを紙の上で出題しているので、それだけでも難しいと言えるかもしれない。
場合の数 検算が難しいことに加え、抜けや重複の可能性もあり、難問の場合正解できる気があまりしない分野である。
数の性質 大抵の場合元ネタがあるのだが、それが数学の高級な問題だったりするので、本質的には難しい。
誘導があることがほとんどなので、そのさじ加減次第といえる。
速さ 設定が複雑なことが多く、そもそも何をいっているのかを追いかけるだけでも大変な問題もある。
「速さ」と一口にいっても様々な問題があり、その「広さ」も難しくしている原因である。

ということで、前のシリーズで取り上げた「場合の数」とは難しさの質が違いますね。

そこで今回のメインテーマですが、
「速さの問題の複雑さに負けないようにするにはどうすれば良いか?」
ということにしたいと思います。

VOL.112で取り上げた「問題文の読み取り」と通じる部分がありますので、よかったらそちらも読んでいただきたいと思います。
「速さ」の場合は、「文章」で与えられたヒントをいかに自分のフィールドに持ち込むかが大切なので、まずは「図」や「グラフ」を描くことから入ります。
そして、そこに「第一の難所」が存在するのです。

「速さ」の範囲が広いこととも関係しているのですが、「どんな図(グラフ)を描くか」のところで誤ってしまうと、そもそも解けなかったり、時間を大きく消費してしまったりというデメリットが生じます。
そして、これが当たらない受験生が多いのです。

なぜ当たらないかを考えていくと、「速さ」の本質が見えてきます。

『 速さ = 距離 ÷ 時間 』

ですから、少なくとも以下の3つについての線分図を描ける可能性があります。

①位置関係
②かかる時間
③速さ

以下それぞれについて解説します。

①最も一般的な線分図。旅人算で解くような問題の時は分かりやすくなることが多い。
一番のお勧めは1回だけ往復するようなケースで、図が描ければ解決することが多い。

②速さでヒントが与えられているがそのまま解こうとしてもうまくいかないケースで、かかる時間に着目することで解決することもある。
速さが異なることで予定の時刻に対して差が生じるような問題の場合、時間の線分図を描くとわかりやすくなる。

③流水算が典型的な例である。

ここまでは線分図についてでしたが他に「面積図」と「グラフ」が考えられます。
また、「時計算」のように「図形」を描くケースもありますので、ある程度の「学習量」はどうしても必要となってきます。

ここまで見てきてなぜ「差が付きやすい」のかが見えてきました。
「学習量の差」がそのまま得点に反映される可能性があるのですね。
また、トップクラスの受験生は皆「学習量」は十分であると考えられますから「差が付かない」ことも納得できます。

面積図が有効なケースは、進んだ道のりを「速さ×時間」であらわすのが良さそうな場合です。
正直に言えば「面積図」が最善と思われる問題はあまり多くありません。

最後に残った「グラフ」が難物です。

「グラフ」は「速さ」「距離」「時間」の3つの要素を同時に視覚化できるので非常に優れたツールと言えます。
万能といっても良い位です。

ただしデメリットもあります。
主なものとして以下の2つが考えられます。

①描くのに手間(時間・労力)がかかる。
②情報が多すぎて焦点がボケる。

特に、①は時間的に厳しい試験では致命的で、その問題を正解してもトータルでは損ということも考えられます。
何でもそうですが時間をかけてしまうとその問題を正解しなければいけないという義務のようなものが発生してしまうので、注意が必要です。

ただし、問題文が何をいっているのかを掴むための手段としてはかなり有効なので、入試本番でグラフを描く可能性は高いと思います。

続いて「第二の難所」のお話をします。

「第二の難所」は「数字の壁」です。

旅人算は距離を速さで割るので、その部分が分数になることがあります。
また、そもそも与えられた数値が分数ということもあります。
速さは比較的計算が面倒になるという印象があります。

そしてこのように数値がいやらしくなると人間の頭はへそを曲げるようなのです。
すんなりと頭に入ってこなくなるのですね。
塾によっては日頃から面倒な数値で鍛えているところもあるのですが、私はこのやり方は危険だと思っています。
基本がしっかりしているならまだしも、まだ未完成である受験生はすっきりした数値で学ぶことをお勧めします。
当たり前ですが、数値が面倒になると解くのに時間がかかります。
では、かけた時間の分だけ本質的な学力が上がるかというとそんなことはありません。
そもそもきついだけだと算数が嫌いになってしまうかもしれません。

入学試験は選抜の意味がありますから、基本問題に比べ数値による負担が重くなっていることが多いです。
ある程度基本ができている受験生はそこまで視野に入れて慣れておくとよいかもしれませんが、一般的な受験生はそれをやると時間不足に陥る可能性が高いですから気をつけてください。

今回は「速さ」の問題でよくある複雑さに負けないようにするためにはどうしたらよいかについて考えました。
VOL.80で「複雑さに負けない」というテーマで書きましたが、今回は「速さ」に絞りました。

まずは図の選択を誤らないように十分に経験を積むことが大切です。
その中でも「グラフ」の扱いがカギを握るわけですが、そのあたりの事情はVOL.65でも書きましたので参考にしてください。

また、数値の煩雑さが問題の複雑さに拍車をかけることもあるのですが、一部の受験生を除いてはそこまで一気にやろうとせず、まずはすっきりした数値で本質的な学力のアップに努めてください。
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今週の1題速さ

難易度★★★★☆

〈図1〉は道路をあらわしています。

AからCまでは一本道で、BはAC上にあります。
CからDを通ってFまで行く道路は「有料道路」で速く走ることができます。
CからEを通ってFまで行く道路は「一般道路」です。
CF間の道のりは「有料道路」も「一般道路」も等しくなっています。
ある日、2台の車PとQが、同時に出発し、「一般道路」からFを目指しました。
PはAから時速54kmで、QはBから時速30kmで走れば、2台は同時にFに到着する予定でした。
ところが、その日はCからEの間で工事をしており、2台とも同じ一定の速度でノロノロと進むことになってしまいました。
CE間を走行中のPは、このままではQより4分遅くFに着くはずでした。
遅れたくないPは、QがEに到着したときにUターンをし、Cまで時速54kmで戻り、そこから「有料道路」を時速90kmで走ったことで、PとQは同時にFに着くことができました。
あとで計算してみたところ、仮に工事がなかったとしてもQがEに到達したときPがUターンをし、Cまで時速54kmで戻り、そこから「有料道路」を時速90kmでFに向かえば、2台は同時にFに着くことがわかりました。

(1)CE間の道のりは何mですか。
また、2台は工事区間を時速何kmで進みましたか。

(2)帰りはPとQが同時にFを出発し、PはEを通って「一般道路」を時速54kmで、QはDを通って「有料道路」を時速90km、「一般道路」を時速30kmで走ったところ、同時にBに到着しました。
AB間の道のりは何mですか。

クリックすると
解答が表示されます
<答>(1)4500m、時速24km (2)9720m
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プロフィール

プロフィール

執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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