VOL.107【図形に強くなる】 -立体の公式

立体図形図形の移動


今回は「立体図形の公式」をまとめてみたいと思います。

「公式」は本の裏表紙に当たり前のように書かれているので、軽視される傾向にある気がします。
ですが、「なぜそうなるのか」を突き詰めていくと結構面白く、「考える力」の養成にもなるので、今回取り上げました。

また、「立体図形の公式」を扱うためには「平面図形の公式」が全て頭に入っている必要があります。
忘れていないかどうか各自確認してみてください。

実は扱える「立体図形」は「柱体」と「すい体」だけなので、それぞれについて公式を紹介し、なぜそれで求められるか等を考えてみます。

①柱体

(表面積)

表面積=底面積×2+側面積=底面積×2+底面の周×高さ

とくに

円柱の表面積=底面の半径×底面の半径×円周率×2+底面の直径×円周率×高さ=(底面の半径+高さ)×底面の直径×円周率 …(A)

「柱体」は「ふた」と「底」が合同ですから、底面積×2は納得でしょう。
また、側面を展開すると長方形になりますから、その面積は「長方形」の「たて×よこ」で求められます。
「たて」はその「柱体」の「高さ」に等しく、「よこ」は「底面の周」に等しいので、上のような式になります。

円柱の表面積は計算をすっきりさせるために(A)のように「□×円周率」の形にしておくと良いと思います。

ここで出来上がった(A)の意味について考えてみましょう。

「底面の直径×円周率」は円周になるので、式の意味は「円周×底面の半径」と「円周×高さ」の和ということになります。

「円周×高さ」が「側面積」を意味することは明らかですが、「円周×底面の半径」の意味するものは何でしょうか。

VOL.104の「今週の1題」の冒頭に答がありまして、結論は「円」2個分で、納得のいく式ということになりました。
(体積)
 体積=底面積×高さ
ここで、そもそも「体積」とは何か考えてみます。

辞書を引くと「立体が占める空間の大きさ」のように書いてありますが、「立体の大きさ」と捕らえておけば問題はないでしょう。

実はこの「体積」の値というものは「比」です。
たとえば「100cm」というのは
「1辺が1cmの立方体の100倍の大きさ、比で言えば「100:1」
ということです。

そうすると「底面積」は「1辺が1cmの正方形の何倍か」という意味であり、高さは「1cmの何倍か」ということをやっているわけです。

そして「1cm」というのは元々
「地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1(1m)の100分の1」
ですから、知らず知らすのうちに地球とサイズ比べをしていたのですね。
※現在の「1mの定義」は「1秒の299,792,458 分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」となっています。

②角すい

(表面積)

表面積=底面積+側面積=底面の多角形の面積+側面の全ての三角形の面積

これを見ると、求めることができるケースがかなり限定されることがわかります。
底面は三角形か四角形であることが普通で、さらに三角形のときは直方体から切り出すようなケースがほとんどでしょう。
切り出したケースでは切り口の面積が厄介です。
大抵の場合一筋縄ではいきません。
最も難しいと思われるレベルがVOL.92の「今週の1題」にありますので参考にして下さい。

(体積)
 体積=底面積×高さ×  3 

公式自体は特に難しいことはありませんが、なぜ「  3  倍」するのかを考えたことのある人はあまりいないでしょう。

小学生でも「  3  倍」になりそうなことが理解できる形があるので紹介します。

1辺が6cmの立方体を考えます。
この立方体の中心と各頂点を直線で結ぶと6個の合同な四角すいに分割されます。
この四角すい1個の体積は
6×6×6÷6=36(cm
です。
またこの四角すいと底面積と高さが等しい四角柱の体積は
6×6×6÷2=108(cm
ですから、確かに  3  倍になっていますね。

③円すい

(側面の展開図のおうぎ形の中心角)

中心角=360°×  底面の半径 母線  

(側面積)

側面積=母線×底面の半径×円周率

(表面積)

表面積=底面積+側面積=底面の半径×底面の半径×円周率+母線×底面の半径×円周率=(母線+底面の半径)×底面の半径×円周率 …(B)

(体積)

体積=底面積×高さ×  3 =底面の半径×底面の半径×円周率×高さ×  3 

円すいは公式の数が多いです。
いっぺんに紹介しましたが大丈夫でしたか?

まず、「中心角」の公式ですが、これは「割合」や「速さ」の公式と同じく、「母線」「半径」「中心角」の3つのうち2つがわかれば残り1つは求められることを示しています。

「側面積」の公式はかなり重要で、「おうぎ形」の面積の公式である
「半径(母線)×半径(母線)×円周率× 中心角 360°  」
は極力使わないようにしてください。

「表面積」に関しては上の最終形のようにしておくのが良いように思います。
今回特に注目したいのは「円柱の表面積」である(A)と(B)の関係です。
式からも明らかなように(A)は(B)の2倍になっています。

まとめると〈図1〉のようになります。

円柱と円すいがあり、表面積に関しては
「底面の半径が等しく、円柱の高さと円すいの母線の長さが等しければ、その表面積の比は2:1になる」
ということです。

また、体積に関しては
「底面の半径が等しく、高さも等しければ、その体積の比は3:1になる」
というおなじみの結論です。

「立体図形の代表的な公式」を紹介しましたが、新たな発見はあったでしょうか。
これを機会に基本の確認をしてもらえれば幸いです。

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今週の1題立体図形の移動

難易度★★★☆☆

〈図1〉のように1辺が12cmで、3つの頂点をa、b、cとする正三角形の板があります。

また、〈図2〉のように底面の半径が、高さが8cm、母線が10cmの円すいが3個あります。

今、3個の円すいの中心がそれぞれa、b、cと重なるように、板の上にのせ、立体Pを作りました。(〈図3〉)

ここで特に底面の中心がaである円すいを円すいAとすることにします。
以下の2回の移動を3つの円すいの底面が同一平面上にあるようにして行いました。

① 点aを中心として時計回りに120°回転

② ①の移動後に点bを中心として円すいAだけを反時計回りに180°回転

①と②の移動によって、立体Pと円すいAが通った範囲すべてで構成される立体をQとします。
円周率を3.14、板の厚みを考えないものとして、以下の問に答えてください。

(1)立体Qを真上(円すいの底面が通った面に対して垂直な方向)から見るとどのようになりますか。
〈図4〉にかき加えてください。

(2)立体Qの体積と表面積をそれぞれ求めてください。

クリックすると
解答が表示されます
<答>(1)
   (2)体積4220.16cm、表面積3014.4cm
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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