VOL.85【受験生との歩み】 慶應編(1)
今回から昨年は取り上げなかった「慶應」について書きます。
中学受験では「慶應中等部」「慶應普通部」「慶應湘南藤沢」の3校が受験可能であり、うち2校が神奈川県にあります。
「神奈川の受験の最高峰は慶應」という考え方もあるようです。
大学付属の私立中としてはトップクラスの人気校ですから、狭き門であることは今後も変わらないでしょう。
試験の対策については同じような偏差値の学校とはかなり異なることになると思います。
また、3校のうち2、3校を併願するケースも多いので、それぞれの似ているところ・異なっているところを押さえておけば、受験勉強の効率が良くなります。
「受験生との歩み」を通してそれらのことを明らかにしていければと思います。
一番はじめに紹介する受験生は中村君(仮名)です。
「普通部」が第一志望で「中等部」も受ける予定の生徒でした。
学力的にはボーダーラインよりやや下でしたが、頑張れば何とかなりそうな微妙な位置でした。
「慶應」3校に共通するのは試験時間が40~45分と短いということです。
その中である程度の量をこなさなければいけないので、「スピード」が必須となります。
以前からこのブログに書いていますが「スピード」と「正確性」の両立が大切です。
「正確性」を損なわない範囲で「スピード」を最大まで上げたいのです。
しかし、それは容易なことではありません。
単純な計算の速度といったものでしたら、練習量を十分にとればある程度まではスピードも上がるでしょう。
ところが、実際の入試では、問題を読み、図・表・グラフ等を描き、途中式を書き、答を出し、それを確かめる必要があります。
その全てをテキパキとこなす必要があり、尚且つミスは許されないのです。
このことからも、試験時間を短くし、その時間内に多くの問題を解かせるというやり方は、選抜試験としての機能を十分に果たすということがわかります。
「慶應3校」は基本的には「多問即答型」の問題で選抜しようという意図があり、そこにそれぞれの学校のテイストを加えていると考えてよさそうです。
あくまでも私の印象ですが、3校のテイストの違いを以下に掲げます。
「慶應中等部」 | 見たことがある問題が並ぶ。基本的な問題が全ての範囲からまんべんなく出題される。 また、答は全て桁数が分かっていて、そこに数字を入れるスタイルである(マークシートに近い)。 易しめの年は9割勝負になるだろうが、最後の方の2問程度に関しては誰も完答できそうもない問題が入っていることもある。 このような年はいかにその問題から逃げるかが大切となる。 |
---|---|
「慶應普通部」 | 肢問のないシンプルな問題がほとんど。典型問題をややアレンジした問題が多い。 「速さ」の問題ではグラフを描かせることもある。 「場合の数」や「推理・論理」の問題が好まれ、2題は出るものと思って準備しておいた方がよい。 「平面図形」「速さ」「場合の数」で差がつきやすい。 |
「慶應湘南藤沢」 | 「計算」「小問集合」の後、やや本格的な大問が4題ほど並ぶ。 大問は範囲に偏りがあり、「平面図形」「立体図形(水が圧倒的に多い)」「規則性」「速さ(流水算が多い)」「文章題(食塩水の濃度・のべ算・ニュートン算が多い)」のうちから4問ということがほとんど。 どれもそんなに易しくないので、合格者平均点は3校の中では一番低いと考えられる。 |
さて、中村君ですが、まず「中等部」にどれだけ適性があるかチェックしました。
「典型問題を素早く正確に解けるか」をみたのですが、なんとか及第点のレベルでした。
課題としては、「知っている」で解ける範囲を広げることと、「スピード」と「正確性」のバランスをより高いレベルで保つことが考えられました。
また、「普通部」の適性は、見たことのない問題に対しての多少の弱さはあるものの、自分の力で道を切り拓いていくバイタリティーはありましたので、悪くないという判断でした。
以上を踏まえ、演習中心の授業とすることにしました。
1題1題問題を解いていき、それに対して私がアドバイスをするというやり方です。
慶應の過去問は宿題にしていたので、授業ではシンプルではあるが少しひねってあるような良問を他校の過去問から私がピックアップし、A4の紙にプリントアウトしたものを使用しました。
「中等部」は数字を入れるだけなのですが、「普通部」は全ての問題で「考え方・途中式」を書かなければなりません。
そのため、授業では広めのスペースに図や式を描く練習をし、過去問の直しを通じて最終的に解答用紙にどのような式を書けば良いのかを指導しました。
私の用意した問題が少し難しかったらしく、ストレスが溜まった時期もあったようですが、徐々にその難易度にも慣れ、算数の調子が上向きになったところで、本番を迎えることができました。
実は中村君と入試直前にやった問題とほぼ同じ問題が「中等部」で出題されました。
元々、「同じ問題が出る」とお母さんに説明していたので、本当に出題されたとわかった時は少しホッとしたことを覚えています。
「慶應」の場合、学力だけでなく「面接」等もあるのですが、結果は両校とも合格でした。
合格の決め手は本人の努力が一番なのは間違いありませんが、私としても、なかなか良いお手伝いができたのではないかと自負しています。
具体的な算数の問題に関するご質問など、お子様の中学受験に関してお困りの点がございましたら、こちらのフォームからご質問を承ります。
お寄せいただいたご質問へは当ブログ上にてご回答させていただきます。
中学受験・算数の問題などに関する疑問、お困りごとや
金田先生に聞いてみたいことなど、なんでもお気軽におたずねください。
今週の1題場合の数
難易度★★★☆☆
「名門戦」という将棋のタイトル戦が開催されることになりました。
第一回は、トーナメントを勝ち上がったH九段とF七段の決勝7番勝負となりました。
7番勝負とは4回勝った方がそのタイトルを獲得するという勝負の決定方法です。
どちらかが4勝した後はもう対局は行われません。
また、将棋には「千日手」と「持将棋」という「引き分け」があり、「引き分け」は勝ちにも負けにもカウントしないので、対局が増えることになります。
将棋には先手と後手があり、先手が先に指して対局がスタートするのですが、番勝負の場合は先手と後手を交互に持つようになっています。
1局目の対局前に先手番を決める抽選のようなものがあり、2局目以降は先後が入れ替わります。
ただし3勝3敗の第7局に限り、もう一度先後を決める抽選を行います。
1局ごとの「結果」について次の項目について区別をします。
1.「勝負がついた」「千日手」「持将棋」
2.「勝負がついた」場合
①H九段・F七段のどちらが勝ったか
②先手・後手のどちらが勝ったか
1局目の「結果」について考えられるものは以下の6通りになります。
- 先手のH九段が勝ち
- 後手のH九段が勝ち
- 先手のF七段が勝ち
- 後手のF七段が勝ち
- 千日手
- 持将棋
また1局目に先手のH九段が勝ったとすると2局目の「結果」について考えられるものは以下の4通りです。
- 後手のH九段が勝ち
- 先手のF七段が勝ち
- 千日手
- 持将棋
(1)第7局までに勝負がつくときの「結果」として考えられるものは何通りありますか。
ただし「引き分け」は無かったものとします。
(2)第7局にF七段が勝ってタイトルを獲得したとすると、「結果」として考えられるものは何通りありますか。
解答が表示されます