VOL.84【受験生との歩み】 開成編(4)

数の性質


高橋君(仮名)はお兄さんも「開成」で、「開成一本」という生徒でした。
成績も良好で、特に大きな弱点も見当たりませんでしたが、ご家庭は不安を感じていたようでした。

「塾の内容だけでなくもっとハイレベルな授業を受け、合格を確実なものにしたい」ということで、私が担当することになりました。

最初の打ち合せで、塾でやったこと等は基本的にはノータッチで、私の用意した教材を使って授業を進めるということになりました。

早速、私は高橋君向けの“スペシャルプリント”の作成に着手しました。
「開成対策」のプリントなので、4問ワンセットとし、各分野から満遍なく良質な問題をセレクトしました。
普段はあまり使わない「算数オリンピック」の問題や試験会場で見たらとりあえず逃げた方がよいと思われる難問も取り入れました。

なぜこのようなプリントにしたかというと、「開成」の出題傾向のブレ幅が大きいからです。
ご家庭の「合格を確実なものにしたい」という要望は、言い換えれば
「どんな問題が出たとしても合格点が取れるような準備をする」
ということですから、難易度がMAXの時にも対応できることを目指しました。

それができたのも高橋君が「基本」がしっかりしていたからです。
模試の結果等から高橋君の学力は把握できていたので、最初からこのようなスタイルで進めることができました。

それに対し、少し足りない状況の受験生に対しては、合格レベルを超えるまで「基本」を徹底します。
これが最優先です。
例えば今年のように易しめの問題だったならそれだけで合格点に到達するでしょう。

ただし、ここで言う「基本」は「開成合格レベルの基本」です。
偏差値50前後の受験生が手も足も出ないような問題をサラッと解く、それが「開成レベルの基本」の力です。
別の言い方をすれば、模試の正答率が10%程度のものまで全て正解できるような力が身につけば、「基本」が身についたとみることができるでしょう。

高橋君とともに授業で取り組んだ問題の難易度についてもう少し説明します。

実力を上げるためにはその時の実力よりも少し上の問題に取り組む必要があります。
この“少し”というのが加減が難しく、我々の腕の見せ所でもあります。
私の基本的なやり方は、授業では正解率が30~60%の問題をやり、宿題に60~80%の問題を出すようにしています。
授業でやる問題の難易度に幅があるのは生徒のタイプや志望校、時期等によって調整をするためです。

高橋君用のプリントを作成するときは、正解率40%をイメージして編集していきました。
元々最高難度の問題に取り組むことが目的だったことと、高橋君の吸収力の高さに期待してこのような設定にしました。

実際に問題を解いてもらうと、ほぼ予想通りの結果だったと記憶しています。
時には過去に誰も正解できなかった問題もきちんと解けていました。
「図形」や「速さ」であっさりあきらめてしまうこともありましたが、「書き出し」に強く、「正解力」はトップクラスでした。

続いて、分野のバランスについて書きます。

「開成頻出」の「平面図形」「立体図形」「数の性質」「速さ」「規則性」の中から2~3題、残りはその他の分野からピックアップし、トータルで上記5分野が全体の4分の3以上を占め、さらにその他の分野もバランスが良くなるように調整しました。

Vol.82で紹介した前田君のときは特定の分野(「立体図形」「速さ」「数の性質」)を補強するプリントを使いましたが、高橋君に対してはそのようなものは用意しませんでした。
これは、高橋君の完成度が高かったことと、より本番に近い形で学習したかったからです。

難易度が上がれば上がるほど問題の取捨選択の必要性が増します。
時にはそれだけで合否が決まってしまうことさえあります。
ですから、高橋君にはただ解法を学ぶだけでなく、実際の試験と同じような設定で、問題の解答順や取捨選択を学んでもらうという狙いがあったのです。

授業を重ねるにつれて、高橋君が本番で失敗してしまう可能性がどんどん無くなっていくのを感じました。
私の狙いがうまくはまったと言って良いでしょう。

それが確認できたのが1月校の受験です。

「西大和(東京会場)」は点数を教えてくれますが、算数は8割を軽く超えていました。
しっかり仕上がったと感じました。

ただ、「西大和」の四教科の結果はあまり芳しいものではありませんでした。
原因は体調不良です。

ここにきて新たな不安材料が生じてしまいました。
詳しいことは教えてくれませんでしたが、精神的なものから来るもののようで、「開成」の入試本番でもある程度の不調は覚悟しなければならないと思いました。

通常合格レベルに到達している場合は「調子の維持」を考えるのですが、高橋君の場合は「算数」で稼ぐ必要を感じたので、最後まで難易度を落とさずに目一杯の仕上げを目指しました。

それが功を奏したのかどうかはわかりませんが、結果は見事合格でした。

表面的には順当な合格ですが、ご家庭からは随分感謝されました。
もしかしたら「算数」の出来が良かったから受かったのかもしれません。

「開成」に合格した生徒4人との歩みを振り返りました。

4人それぞれに「課題」があり、その要望に応えるのが私の役目でした。
合格という結果だけをみれば、満足していただけたと思っています。
ただ、「算数」では「答」だけでなく途中の「考え方」が重要です。
それと同じで私たちの指導も「結果」もさることながらその「内容」こそが大切だと思います。

まずは現6年生が来年の試験で力を発揮できるよう、日々の授業を精一杯頑張ります!

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今週の1題数の性質

難易度★★★☆☆

名門君と目白君の2人が次のようなルールでゲームを行いました。

  • 1099までの二桁の整数が書かれた90枚のカードを用意する。
  • 90枚のカードをよく切り、2人に2枚ずつ配り、その2枚により得点を決める。
    ただし、一旦配ったカードはゲームが全て終了するまで戻さない。

<得点の決め方>

2枚のカードに書かれた数字をPとQとする( P > Q )。

P Q という分数を作り、この値を基礎点とする。

【ボーナス1】
P Q を約分すると整数になる場合 ⇒ 基礎点×2
P Q を約分すると既約分数 p q になる場合
qが2 ⇒ 基礎点×2
qが4 ⇒ 基礎点×3
qがその他 ⇒ ボーナスなし

【ボーナス2】
P → ab、Q → cd(a、b、c、dは一桁の整数)とすると、
i)abcd ÷ cd → 商が整数になる
ii)cdab ÷ ab → 商が整数になる
i)、ii)のどちらか1つを満たす ⇒ 基礎点×4
i)、ii)の両方を満たす ⇒ 基礎点×8

※【ボーナス1】と【ボーナス2】の両方を満たす場合はそれぞれをかける。

(例)「15」と「45」の場合

45 15 =3 ⇒ 基礎点3、また、整数なので【ボーナス1】は「×2」
4515÷15=301(整数)、1545÷45=34 3 (分数)で【ボーナス2】の1つを満たすので「×4」
得点は
3×2×4=24(点)

(1)このゲームの1回の最高点は何点ですか。

(2)2人は2回の合計点で勝敗を決めることにしました。
目白君は、1回目が「90」と「18」、2回目が「48」と「12」でした。
名門君の1回目のカードのうち1枚は「16」です。
また2人の4回の得点は全て異なっていました。
この勝負、名門君が勝ったのですが、2回目のカードは何と何でしたか。
下の(あ)と(い)に入る数を求めてください。
( P ,Q )=( (あ)(い)

クリックすると
解答が表示されます
<答>(1)150点  (2)(あ)95、(い)10
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プロフィール

プロフィール

執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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