VOL.80【得点力アップ講座】(5)複雑さに負けない
今年の「秋」はやたらと雨が降っているという印象です。
正直あまり良い気はしないですが、勉強をするには良い環境と割り切って、頑張っていきましょう。
私にとっての「秋」のイメージは「模試の秋」なのですが、皆さんの模試の成績はいかがでしょうか。
【得点力アップ講座】をお読みいただき、少しでも点数を増やしていただければと思います。
◎【得点力アップ講座】(5)複雑さに負けない
入試問題は選抜するためのものですから、差がつくように作ってあることがほとんどです。
ただ、この「差をつける問題」というのが意外と難しい(作る側目線です)。
特に難関校では普通の問題を出しても皆ができてしまうため差がつきません。
かと言って誰もできない超難問もやはり差がつかないので、あまり意味がありません。
学校側は「発想力勝負」のような問題を出したいのでしょうが、現在のような情報化社会においては逆に細かい知識を要求するような結果となるかもしれません。
そこで、「考え方は難しくないけれど正解しにくい問題」が浮上してきます。
「正解しにくさ」を生む要素を考えてみます。
①数値が煩わしい(大きい、小さい、分数、etc.)
②計算が煩雑になる
③設定が複雑
少し解説をします。
①は、簡単に言えばすっきりしない数字が使われている場合です。
時速60kmと時速61kmだと計算量がかなり変わってくる可能性があります。
また数字が大きくなるとそれだけで難しくなることもあります。
「規則性」や「場合の数」は単純に数字が大きくなれば正解率が下がるのが普通です。
例えば
「規則性」で「10番目」よりも「1000番目」、
「場合の数」で「6個」よりも「10個」
が大変なのは自明です。※厳密に言うと数字が大きくなることで解法に制約が加えられる場合は、根本的に難しくなっていると考えられるので、今回は除いて考えなければいけないのでしょうが、はっきり区別できるわけではないので一応入れておきます。小さいというのは極端に小さい時のことです。
小数点以下10桁なんて嫌ですよね。
また、分数が出てくるだけでも正解率は下がります。
「時計算」が苦手な受験生は「分数」にやられている可能性が高いです。
また、これは私だけなのかもしれませんが、「整数」と「分数」では頭の働きが変わってきます。
「分数」を見ても頭が働かないので、「整数」に置き換えることを絶えず考えているぐらいです。
②は当たり前かもしれません。
模試の正答率を見ても「計算問題」よりも単純な「一行題」の方が正答率が高いので、「計算ミス」を防ぎきるのはなかなか大変なのがわかります。
また、計算したは良いものの結果が小数点以下第三位や、分母が3桁の分数になるとかなり不安になってしまいます。
それが正解だったとしても見直しをせざるを得なくなるので厳しい問題と言えるでしょう。
③が今回のメインテーマです。
大学入試改革の影響か、近年各学校がそれぞれ入試問題に工夫をしているのを感じます。
「大学入試共通テスト」が、「十分な知識をもとにした思考力・判断力・表現力を重視する」 ということなので、その流れが「中学受験」まで下りてきていると言えるでしょう。
設定を複雑にすることで、受験生の「思考力・判断力」をみることができ、さらに「差」がつくとなれば、「設定が複雑な問題」は出題する側からとても重宝される問題ということになるでしょう。
算数の本質的な部分の難易度を上げるのではなく、設定を複雑にすることによって「差がつきやすい問題」にするという手法が用いられやすい分野は「文章題」が挙げられます。
文章題の中でも「速さ」が「設定が複雑な問題」の宝庫です。
そこに「数値の煩わしさ」や「計算の煩雑さ」が加わると「正答率」がぐっと下がります。
私の経験から察するに、「本質的に難しい問題」に上の①や②が加わるとほぼ正解できなくなり、「設定が複雑な問題」に①や②が加わった場合は極めて高いレベルで差がつきやすくなるということだと思います。
最上位の学校を目指す受験生にとって「設定が複雑な問題」は越えなければいけない壁ということでしょう。
それでは対策を考えていきましょう。
i)問題をよく読む当たり前ですが問題を読まないと正解はあり得ません。
パッと見が複雑だと、ほとんど読まずに感覚だけで解こうとする受験生もいますが、そういった姿勢は改めるようにしましょう。
また、読み取りの際、勘違いをしてしまうと修正が困難なので、初見は集中力MAXで臨むようにしましょう。
ii)図(等)を描く問題文に書いてあることを、線分図・面積図・表・グラフ・ベン図・絵などに置き換えましょう。
これをやることによって、「脳にスイッチが入る」ことは以前述べました。(※VOL.23参照)
「速さ」の場合、「線分図」でいければ「線分図」、そこにまとめきれそうもなければ「グラフ」という2段構えが有効でしたが(※VOL.43参照)、設定が複雑な場合は多少「グラフ」に気持ちを寄せておいても良いでしょう。
「グラフ」の万能性が威力を発揮しそうです。
「図」や「表」の描き方そのものについても「複雑なもの」に対応できるような「上級テクニック」が存在します。
それらは指導者から直接習うのが一番でしょう。
大抵は使う場面が限定されるので、そのあたりのことをきちんと習わないといけません。
iii)何か別なものに置き換えられないか考えてみる例えば
「1から50までの番号が書かれたカードがある。このカードに対して、まず1の倍数を裏返し、次いで2の倍数を裏返し、3の倍数を裏返し、という要領で1~50まで、その都度倍数を裏返す。では、2回だけ裏返されたカードは何か。」
という問題は
「素数を答えればよい!」
と置き換えれば簡単になります。
ここまでスッキリするケースはあまりないかもしれませんが、複雑さの中に光を見出せるかもしれません。
チャレンジする価値はあると思います。
iv)比の利用・計算の工夫設定が複雑な上に「数値の煩わしさ」や「計算の煩雑さ」が加わるとどんどん苦しくなってしまいます。
これらを緩和するのに有効なのは「比の利用」と「計算の工夫」です。
特に「速さ」は解法を含め「比」を上手に使えるようにしましょう。
以上、「設定が複雑な問題」の対策を考えてきましたが、基本的にはいつもと変わらないということで良いと思います。
やるべきことをきちんとやるだけです。ただし、集中力は高めてください。
今後「設定が複雑な問題」と出会ったら「集中力を高める良いトレーニングの機会」ととらえて、前向きに取り組んでいきましょう。
このように「集中力」が高まれば、その分「得点力」がアップすること請け合いです。
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今週の1題速さ
難易度★★★★☆
A、B両地点を結ぶ遊歩道がありその途中に公園Cがあります。
ある日、名門君と目白君はAB間を何往復かすることにしました。
2人は10時ちょうどにCからAに向けて同時に出発しました。
名門君がAに向かっている途中、向こうからゆっくりと歩いてくる猫の白ちゃんとすれ違いました。
その後Aを折り返してBに向かうと前方に先ほどの白ちゃんが見えました。
名門君がちょうど白ちゃんに追いついた時、目白君と初めてすれ違いました。
その時の時刻は10時1分でA地点からの距離は20mでした。
2人が2回目にすれ違った時、目白君はBからAに向かってゆっくりと歩いてきている猫のトラちゃんとちょうどすれ違いました。
2人が3回目にすれ違った時、目白君は白ちゃんとちょうどすれ違いましたがその時の時刻は10時4分でした。
2人が4回目にすれ違った時、目白君はトラちゃんとちょうどすれ違いました。
2人が5回目にすれ違った時、目白君は白ちゃんとちょうど出会いましたが、その時名門君が大声を上げたので、白ちゃんは驚いて、今までの5倍の速度でAまで引き返してしまいました。
その後、名門君が初めて目白君に追いついたところで、二人は解散しました。
また、白ちゃんがAに着いたのはトラちゃんがAに着いてから54秒後でした。
名門君と目白君の速さは一定で、白ちゃんは名門君の声に驚くまでは一定の速さでAからBの方向に歩き、トラちゃんは一定の速さでBからAの方向に歩いたものとします。
(1)トラちゃんがBを出た時刻を求めてください。
(2)AB間の距離は何mですか。また名門君の速さは分速何mでしたか。
解答が表示されます