VOL.43速さ(2)

速さ


前回の問題はいかがでしたでしょうか。
「オリジナル」といいながら「元祖ニュートン算」の焼き直しを出してしまいました。
ただ、なぜ「ニュートン算」というのか疑問を持つ生徒さんに対するひとつの回答にはなったと思います。

また、「元祖」の単位は「エーカー」になっていましたがそれを「ヘクタール」に直しました。
面積も大体同じになっていますから、雰囲気はほぼ再現できていると思います。

今週はなるべく見たことがない問題を目指したいと思いますが、どうなりますか……

今週のテーマは「速さ」です。

「速さ」も苦手にする受験生が多い分野だと思います。

理由はいくつか考えられますので列挙します。

  1. 速さの中でも「旅人算」、「流水算」などがあるように、範囲が広い。
  2. 設定が複雑なことが多い。
  3. 何をどう書いたら良いかすぐにはわからない。
  4. 計算が面倒になることがある。

ほかにもあるとは思いますが、今回は上記4つの対策を考えたいと思います。

まず、Ⅰの範囲の広さに対してですが、これは全ての範囲を終わらせるしかありません。
塾でもかなりの時間を費やして1つ1つの分野を学習しているはずです。

ここで大切なのは、それぞれの分野における「テーマ」を理解し、しっかりと記憶するということです。
例えば、「時計算」は長針と短針の速さは決まっているので、池の周りを二人が同じ方向にずっと回っていることになると理解し、長針と短針の速さは記憶します。
このような学習を全ての分野で行う必要があります。

その上で全体像を把握することが大切です。
「速さの公式」や、「旅人算」はどの分野でも必要となってきますし、「比」の利用や「グラフ」の活用までも視野に入れておくべきでしょう。

範囲は広いですが、なるべく早い時期に全ての範囲を終わらせた方が良いでしょう。
なぜなら「全体像の把握」が特に大事だからです。

次に、Ⅱの設定の複雑さの対応法を考えます。

複雑な問題は一読しただけでは何を言っているのかわからないことさえあります。
そんな状態では解くことはまず無理ですから、自分のフィールドに引っ張り込むことが必要になります。
それが図や表、グラフを書くといった「別のものに置き換える」作業です。

置き換えがうまくいけば、あとはそれを見ながら考えていけば、自ずと正解を導くことができるはずです。

気を付けなければいけないのは、この部分をパターン化するのには無理があることが多いということです。
塾の試験で手っ取り早く点を稼ぐにはパターンを暗記することは得策かもしれませんが、「受験」という大きな観点からはそれは無駄な労力となる可能性が高いです。
基本的な事柄に関しては「理解した上で記憶する」ことが大切ですが、細かい部分は無数に変化があるので、パターン化は無理ということを知っておいてください。

ただ、どこまでが基本のラインなのかは実にデリケートな問題なので、指導者のもと線引きをすると良いでしょう。

続いてⅢの対策です。これはⅡとつながっています。
「速さ」の場合、問題を読んで図を書こうとしたが、何の図をどう書いたら良いかわからない、ということが頻繁に起きます。
これは他の文章題ではあまりないことです。

例えば「線分図」を書こうとした場合、切り口が3つあるので、それが障害になります。
3つというのは
① 位置関係
② 時間
③ 速さ
です。

ただし、旅人算なら①、速さを変えると予定より早くなったり遅くなったりする問題は②(①でも可)、流水算は③、といった具合に「原則的にはこれ」というものはあります。
その「原則」は記憶することが鉄則です。

「原則」通りにいかないケースも多々ありますがこれは経験でカバーします。
普段の学習の姿勢としてはまず書いてみて、ダメなら次をやってみる。
このような経験を積むことによって、最初から正解の図に行き着く可能性が上がっていきます。

また、「線分図」以外にも「面積図」や「グラフ」を書くケースもあります。
この「グラフ」が諸刃の剣のようなもので、取扱に注意が必要です。

「グラフ」は上記①~③の要素をすべて表すことが可能なので、切り口をどうしたら良いかと悩む必要はありません。
一種の「万能ツール」なので、難問は「グラフ」を書いて攻略するケースが大半になります。

ただ、「グラフ」にも欠点があります。
ひとつは書くのに手間がかかること。
もうひとつは、焦点を定めにくい(線分図のほうが分かりやすい)ことがあることです。
ですから、何でもかんでも「グラフ」を書くのではなく、「線分図」でいけるものは「線分図」を書くという方針が良いと思います。

最後にⅣの対策を考えます。
計算が面倒になる典型的な例は「時計算」で、「答」が「分数」になることがほとんどです。
「分数」が出てくると嫌なもので、それだけで「時計算」に苦手意識を持ってしまう受験生もいるほどです。
これは、「分数」が普通という感覚になるまで「分数」に慣れることで克服できるでしょう。

「答」そのものが「分数」になることは仕方ないのですが、これが「答を出す過程」で頻繁に出てくると計算ミスの恐れもあり、正解率が下がってしまいます。
実はここに工夫の余地があります。
具体的には「比」をうまく利用すれば良いのです。

カリキュラム上「旅人算」等を習った後で「比」をやるので、多くの受験生が「比」をあまり利用しないまま解いていると思われます。
「速さと比」の単元で学習するのは主に「逆比」なのですが、それ以外にも「比」を利用できる場面が多く、大抵の場合計算が簡潔になります。

「旅人算」で解くことが第一感であったとしても、ほんの少し「比」を使えないか検討してみて下さい。新たな可能性が広がると思います。

以上、「速さ」対策でした。

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今週の1題速さ

難易度★★★☆☆

甲地と乙地は1本道で6km離れています。
PとQの二人が甲乙間を一定の速さで往復することにしました。
まずPが甲地から出発し、その18分後にQが甲地を出発したところ、甲地から3.6km進んだところでQはPに追いつきました。
乙地に着いたQは8分間休んでから甲地に向かい、Pは乙地で11分間休んでから甲地に向かいました。
Pが乙地から1.5km進んだ時、Qは甲地に到着しました。

(1)

QがPに追いついたのはPが甲地を出発してから何分後ですか。

(2)

乙地から甲地に向かうQとPが出会ったのはPが出発してから何分何秒後ですか。

 

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<解答>(1)36分後  (2)57分20秒
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プロフィール

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執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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