VOL.2151問全力投球(1) 桜蔭中
今回から新しい企画を始めたいと思います。
題して「1問全力投球」。
入試問題から「1問」をピックアップして、深く掘り下げることにより、「その学校に合格するのに必要なものを探る」というのが狙いです。
できればこのブログの目玉として、ずっと続けていきたいと考えています。
記念すべき第1回は「桜蔭中学」の2021年Ⅳを取り上げます。
まずは問題をみてください。
円のまわりを2点がまわる、「図形上の点の移動」の問題です。
この問題ではとりあえず「わかっていないもの」がありませんから、図に情報を書き込んで、それを見ながら方針を決めていく姿勢が良いでしょう。
注意点としては
・円周率が3.1
・大円の半径は50+10=60(m)
・ベルが鳴るのはa、b、oが同一直線上にあるとき→baoの順かaobの順
が考えられます。
これらに気をつけながら問題を解くわけですが、その前に「点の移動の問題」について、一般的な事柄を考えてみたいと思います。
「点の移動の問題」は「速さ」に「図形」の要素が加わったものですが、主に3つのタイプに分けることができます。
①速さ(旅人算)の要素が強いもの
②図形の要素が強いもの
③規則性の問題に帰結するもの
もちろん、どれも複数の要素が入ってくるのが通常ですから、「どちらかというと」ということです。
では、この問題はどの要素が強いのでしょうか?
結論から言うと②の要素をいかに削って①だけに持っていくか、ということと、ほんの少し③を使うと手間が省けるという作りになっていると思います。
これらを踏まえて以下を読んでみてください。
〈解説〉
(1)
aさんとbさんの速さがともに分速50mということを押さえておきます。
小円の円周が
2×50×3.1なのでこれを50で割って
2×50×3.1÷50=6.2(分)…a
ここで大円と小円の円周の比は半径の比と等しいので6:5です。
速さが同じ場合かかる時間は道のりに比例するので
6.2× 6 5 =7.44(分)…b
(2)
ここからが本番です。本校特有の数字の煩雑さとの闘いが始まります。しっかりとやっていきましょう。
※シャドウを設定する
oからaに向けて直線を引き、その直線と大円の交点をsとします。sの速さは半径が6/5倍なので、
50× 6 5 =60(m/m)
です。
ベルがなるのは、bsが直径になる時か、bとsが重なった時です。
最初は直径になるときなので
2×60×3.1÷2÷(50+60)
= 93 55
=1 38 55 (分後)…1回目
以後は 93 55 分ごとにベルが鳴るので
93 55 ×2=3 21 55 (分後)…2回目
(3)
速さを変えない時、5回目にベルがなるのは
93 55 ×5= 93 11 (分後)
です。
かかる時間は速さの逆比なので、速さを変えてから5回目にベルが鳴るまでにかかった時間は速さの
50:70=5:7
の逆比で
7:5
で、その差が1分ですから、
7-5=2
の2が、1分に当たります。7に当たるのは
1× 7 2 =3.5(分)
なので、求める答は
93 11 -3.5=4 21 22 (分後)
以上、みてきたように「数字の煩雑さと闘い…」と言っていた割には、時計算に毛が生えた程度で拍子抜けした方もいたかもしれません。
ただしこれはなるべく数字が煩雑にならないように解いたのであって、やり方によってはもっと手間がかかったかもしれません。
例えばシャドウを小円の方に設定してしまうと、速さが分数になってしまいます。それ自体は大した問題ではないかもしれませんが、足し算の時通分しなければならず、それが見えているのであまり気が進まないのです。
また、この手の問題は「角速度」を使えば半径の違いは問題なくなるのですが、このルートが一番数字が煩雑になります。
受験は時間との闘いでもあるので、数字との闘いは極力避けたいのです。
そういった意味でも本問は罠が仕掛けてあり、かつ正しいルートを進んだ場合、それなりの恩恵があるという、「差がつく問題」になっていたと思います。
最後に、今回は「旅人算」を使って解きましたが、「相対速度」の考え方でもほぼ同じようなことになります。「相対速度」が威力を発揮するのは点が3個以上の時かもしれませんね。
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