VOL.81【受験生との歩み】 開成編(1)

場合の数


今回から、過去に私が指導した生徒がどのようにして難関校に合格したのかを振り返りたいと思います。

誰なのか特定できないように、一部脚色してある部分もあるかもしれませんが、核心部分はなるべく正確な記述をしたいと思います。

第1回は、開成に合格した生徒です。

鈴木君(仮名)は優秀な生徒でした。
5年生の終わり頃から担当したのですが、算数が得意で塾の成績も良好でした。

しかし、私は指導当初からあまり楽観的にはなれませんでした。
その理由は、鈴木君が精神的にかなり幼かったからです。
そして、当時はそれをどのようにして克服したらよいかがはっきりとは見えていませんでした。

ミスが多いタイプではありませんでしたが、問題が複雑になった時の読み取りに難がありました。
また初見の問題に弱く、粘りに欠けるところもありました。

そして、幼いという弱点は国語に一番影響が出ると思われ、算数は満点を狙わざるを得ないという厳しい状況に置かれていました。

授業の進め方はひたすら問題を一緒に解くというシンプルなスタイルでした。
少しでも油断すると負けてしまうので、いつも真剣勝負、そんなちょっぴり緊張感が漂う授業でした。

鈴木君と一緒に問題を解いていて感心することがいくつもありました。
例えば、文章題等で検算が容易なケースでは、確かめを行ってから答のアンダーラインを引くことを徹底していました。

また、基本的には勉強量の豊富さを生かし、知識をベースに問題を解くスタイルでしたが、算数の美的感覚に優れ、絶えずもっと工夫できないかということを考えながら問題を解いていました。

ある時、正六角形と正七角形の内角の差を求める問題がありました。
鈴木君にとってはどうってことない問題でしたが、どう解くか少し興味があったので、横から観察していました。

360÷7=51  (お、外角の和=360°を使ったな。まぁ、彼にとっては普通だな)
180-51  ・・・ (正七角形の内角を出せばそこから120°を引けば答か・・・)
と、ここで消しゴムで上の式を消してしまう。
60-51 = 8(答) (なるほど、外角-外角でも良いわけね!)

わざわざ消して式を書き直したあたりに鈴木君のこだわりを感じました。

特に塾のフォローということはせず(質問対応のみ)、問題集を決めてそれを進めていたのですが、困ったことがありました。
それは、2週間もするとも問題集1冊全部終わってしまうので、やるものが無くなってしまうということでした。

そこで、私は問題集を使うのではなく過去問から問題をピックアップすることにしました。
その際特に重宝したのは関西の学校でした。
「灘」はすでに持っていたので、「甲陽」、「洛南」、「西大和」、「東大寺学園」、「神戸女学院」等の過去問をネットで購入し、そこから良問をチョイスし授業で使用しました。

また、私が数値替えをしたものを使って復習もしました。
解法がまとめてあるタイプの教材は数値替えが特に有効でした。

一方、彼の弱点の解消はなかなか進まないという一面もありました。

例えば野球の「打率」がテーマの問題だと、彼は野球のことを全く知らないので、イメージがつかめないらしく、説明してもなかなか理解できない様子でした。
同様に「トーナメント」、「リーグ戦」も知らなかったため、1から説明しなければなりませんでした。

また、「図形」が苦手というわけではなかったのですが、自分で別の図形を作るといった補助線を引くことがなかなかできず、そういった問題には苦戦する傾向にありました。

そして最大のネックは「初見の問題に弱い」ことでした。
これはどの受験生にも言えることではあるのですが、彼の場合、既視感がある問題はほぼ完璧なのに対して、初見の問題にはあまりにも脆いというギャップがありました。

そこで私がやったことは、私自らがオリジナルの問題を作り、彼に解いてもらうということでした。
もちろん、範囲は決めてありましたが、単なる数値替えではなく、新しい要素を組み入れるようにしました。

※ 〈今週の1題〉で当時鈴木君に出題した問題を再現しました。なかなか手ごわいですよ。

このオリジナルの問題の効果がどれほどあったかはわかりませんが、少なくとも初見の問題に挑戦する機会を多く持つことができたことは確かです。

そんな鈴木君も秋の学校別の模試では失敗したことがありました。
普段ほとんどミスをしなかったのですが、なぜかその時だけミスを連発してしまい、合格可能性20%未満という判定が出てしまいました。

私は内容を分析し、ミスさえ気をつければ問題ないと判断しました。
お母さんにそのことを説明し十分納得してもらうことができました。

そして、冬になり、ついに待っていたものがやってきました。
鈴木君が少し大人っぽくなってきたのです。
それは志望校に合格したいという気持ちが強くなってきたということに現れていました。

今冷静に考えれば、国語の不利を差し引いても十分合格圏にあったと思いますが、当時は余裕など全くありませんでした。
毎回私が問題を用意し、それに鈴木君がチャレンジするという日々が続きました。

このように、教える側も目一杯の授業を続けた結果、見事開成に合格という結果を掴むことができました。

鈴木君は合格という結果を手にしましたが、私にも彼との出会いが多くのものを与えてくれました。
その後、何人も開成志望の生徒を担当しましたが、その際、鈴木君ができなかった問題をよく授業で取り上げました。
鈴木君が私の中で開成合格レベルの基準になってくれているのです。

また、現在のオリジナルの教材をメインにする授業のスタイルや、このブログの「今週の1題」のような作問にも鈴木君の影響を受けました。
鈴木君には本当に感謝しています。

ちなみに、鈴木君が中学2年生の時に将棋を指す機会がありました。
私も若い頃は道場で3、4段で指していたので、簡単には負けないと思っていたのですが・・・

完敗でした。

鈴木君、あれが私からのお礼だよ!(負け惜しみ)

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今週の1題場合の数

難易度★★★☆☆

〈図1〉は正七角形の全ての対角線を引いたものです。
△ABGは二等辺三角形です。
〈図2〉は正七角形に2本の対角線を引いたもので、内部が4個の部分に分けられています。

(1)〈図1〉の中に二等辺三角形はいくつありますか。

(2)正七角形に12本の対角線を引くと、少なくとも何個の部分に分けられますか。

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<答> (1)175個 (2)36個
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プロフィール

プロフィール

執筆

金田雅昭 講師
【名門会家庭教師センター】

受験算数指導のエキスパート講師、男女御三家や早慶附属中など難関校への合格実績多数。

合格実績

灘中、開成中、桜蔭中、慶應義塾中等部、女子学院中、麻布中、栄光学園中、聖光学院中 他

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